今夜のNHKクローズアップ現代は、『多発する!天井落下に潜むリスク』というタイトルで、建築内装のつり天井の危険性を指摘していました。
つり天井とは、軽量鉄骨天井と言われ、天井から金属ボルトで金属製の金物で下地を作りそこにボードを張る形で作られています。
【クローズアップ現代より(以下写真、同じ)】
実は大学生のころ私は夏冬の長期休みに入るとこの天井下地作りのアルバイトを四年間ずっとしていたのでした。
今回地震による天井落下被害を見るにつけ、その下地の作り方は私がやっていた35年前のアルバイトの時と全く変わっていません。
それだけ技術的には確立したやり方だったということなのでしょう。とても懐かしい光景でした。
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クローズアップ現代では、構造の説明からその弱点をしっかりと押さえていました。
金属の下地は、天井からボルトが下がり、そこにチャンネルという部材を取り付けその下にバーと呼ばれる部材をクリップと呼ばれる金具で取り付けます。
しかし地震などによってそれがゆすられるうちに曲げているところが次第に開いてはずれてしまい、それが数多くなると取り付けているボードの重みを支えきれずに落下するという事故に繋がります。
そもそも天井は内装の一部とされて、構造体のように耐震性を確保する必要のない部分とされていて、耐震基準もありません。
しかし体育館やプール、ホールなど、大面積で高いところから部材が剥がれ落ちたりすると、その衝撃はかなりのもので、そのリスクは見過ごされてきたと言えます。
実験で、天井板を4mの高さから落としてみたところ頭蓋骨が骨折するほどの衝撃があったと言います。
上記で述べたクリップが外れて天井材が落ちるという事象に対して、国土交通省では新しい安全基準を作成しました。
しかし新基準が適用されるのは、一定の高さや面積で、四月以降新築もしくは増築されるものだけ。既存のものには遡及して適用はしないのです。
そして新基準の内容は、部品の強度とねじ止め、斜め材による補強、天井と壁の間に6センチ以上の隙間をとることの三つ。
そこでの課題は、手間が4倍近くかかることとそれは工期や人件費に跳ね返ります。
また新基準でやろうにも、既存の天井を補強することがスペースの関係で難しい事例もあるといいます。
文科省では、修理するよりも撤去することで安全を優先する措置を取っています。
また、劇場など遮音性など音の要素を強く求められる建物内部では、隙間をあけなくてはならないという決まりによって、音響性能を確保することへの取り組みが求められることになります。
天井は、その上に空調のダクトや電気の配線などが走っていて、それを隠す美観効果、また音をはね返す音響効果、断熱などの効果が期待できるところなので、安全のためになくても良いのか、ということになると、課題が残ります。
重たいボードでなくて、軽くて強い膜などの素材を使うということは一つのアイディアですが、燃えないという面でやや不安が残ります。
これからの安全安心な建物内部の大きな課題と言えるでしょう。
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私が若い時やっていたアルバイトでは、「内装工事のアルバイト募集」とあったので、行ってみたところ、最初にやらされたのは脚立と足場板を運んで室内に足場を組むことばかりでした。
一緒に入った若者の中には、「内装業」と言われてクロス貼りのような軽い仕事をイメージしてきたのに重たい足場運びだったことに閉口して早々にやめていった者もいました。
少し続けて慣れてくると、自分にも下地を組ませてもらったりして、新築マンションやデパートの中を作ったことも多くありました。
今でも残っている当時のマンションを見ると懐かしくなって、モノ作りはいいな、と思うのです。
さて、技術的には確立していたはずの軽量鉄骨天井ですが、より強い耐震性と美観性、耐久性、経済性などを求められて新しい技術開発も行われることでしょう。
ちょっと懐かしいクロ現の番組でした。