昨日の14日は火星が最接近なのだそうです。
火星は太陽系の中で地球のすぐ外側を回る惑星で、太陽の周りを回る公転周期は地球が365日なのに対して687日と約二倍です。
そのため地球は約2年2カ月毎に火星を追い越しますが、このときに地球と火星の距離が一番近くなり、このときを火星接近と呼んでいます。
しかし地球と火星はともに楕円軌道を回っているため、それぞれの楕円のどこで一番近くなるかによって最接近のときの距離は異なります。
これが15年から17年に一度、お互いの軌道が近いところで接近になるときがあって「大接近」と読んでいます。
今回は接近ではあるのですが、距離は約9300万キロメートルとのことで、大接近時に5600万キロメートルになるのに比べると見かけの大きさもずっと小さいことでしょう。
ネットにこの辺の説明を上手にしている群馬県立天文台のホームページがあったので貼っておきましょう。
【県立群馬天文台ホームページより『火星大接近』】 http://www.astron.pref.gunma.jp/flash/mars2.html
さて、大接近の時は夜空の火星の光度も増して、ひときわ赤く光り輝く天文イベントになるのですが、1971年、ちょうど私が中学一年生の夏はその家政大接近の時で、そういう話題もあって天文が好きになったのでした。
このときは中学校でも理科教育の一環として天体望遠鏡の斡旋があり、私も口径80ミリ、焦点距離1000ミリの屈折式天体望遠鏡が7~8千円だったのを買ってもらって、暇さえあれば夜空の星や星団などを観ていました。多分人生で一番嬉しかったことの一つだったと思います。
このときは世間で火星大接近が話題になったのでさぞや天体望遠鏡が売れたのではないか、と思うのですが、最近はそうした話題もあまり聞かれなくなりました。
子供が少なくなったということもあるかもしれませんが、私の印象は子供の時よりもその後の火星探査の実績を積み上げた中で、自分自身が望遠鏡をのぞいてみて感じる興奮や価値が相対的に下がってしまったのではないか、と感じています。
自分で小さな望遠鏡をのぞいて星の姿が見える以上の美しい画像と興奮がNASAのホームページから得られます。火星の大地を走る探査機の映像が自宅のパソコンで見られる時代なのです。
公共の天文台や望遠鏡も充実していて、自分の小さな望遠鏡よりはずっと鮮明な天体の姿を見せてくれます。
子供たちにはまさにそういう情報が充実した今の環境しかないので、昔と比較することに意味はありませんが、火星が謎に満ちていたときのワクワク感がうすれてはいないでしょうか。
あまりにデータや画像が充実し、新たな謎のレベルが学問的にあまりに高度なものになってしまった今、ちょっと勉強すれば手が届くような好奇心が無くなってしまったような気がして心配です。
長年の研究成果の積み重ねはもちろん大切ですが、今の子供たちが同じ年齢で大学に入りそこで習得をしなければならない過去の成果の量は年々増えています。
よく人生の先輩から「君はこんな本も読んでいないのか!」と言われることがありますが、多分、その方が若かった頃に比べると今ある本の種類は当時よりも格段に増えていることでしょう。
時代が下るほどに、インフラでも知識でも学問成果でも、先人が積み重ねてきたストックは増えて行くので、それをどう利用し、守り、発展させるかという苦労の程も変化して行くのだと思います。
ますます大変になるこれからの若者を見守ってあげたいものです。