わが組織では公務員の総人件費改革の名のもとに、7年間にわたって採用者がゼロという年が続きました。
今年は幸い二名の採用が行われたのですが、これから毎年何名が採用されることになるかは毎年の状況次第で、定まっているものはありません。
職員が退職してもその分は補充しないという措置によって、総体としての人数を減らすことにはつながり、確かに全体としての人件費を減らすことにはなりましたが、徐々にその弊害が見えてきました。
新人を採用せずにいた期間が続いた一方で、現職の職員はその間にどんどん歳を重ねて退職に向かっています。
結果として、今後10年で総勢180名の部門のうち、約50人が定年で退職になると予想されますが、その間に採用になるのはせいぜい20~30人程度でしょうか。
上記の予想通りなったとして、部門の人数は10年で20名程度減ることになりますが、同時に考えなくてはならないのは、単なる人数の減少問題以上に、現場から経験豊富なベテランがいなくなるという現実です。
20~30名の新人が入って来るとしても、その陰で50名のベテランが消えてゆく。
ベテランには半生をかけて培った経験やスキル、ノウハウといった目に見えない財産があります。
社会全体が高齢化するといっても、ある特定の年齢層のバンド幅で切ってみると、少子化によってそこに入って来る人と出てゆく人には大きな差が生じて、次第に減少してゆくことになります。
職場の中で技術を継承しているからこそ、部隊全体としての仕事の質が維持されているのですが、技術を伝える側の人数が劇的に減るのが大量採用した時代が消えてゆくこれからの時代です。人数と同時にノウハウや技術が消えるのはなんとか避けなくてはなりません。
人にはそれぞれが持つ目に見えない知識があり、これを暗黙知と言います。
これを文字にしたり映像にしたり資料にしたりすることで、見る人が見れば伝わるような知識、つまり「形式知」とか「公開知」と呼ばれるものに転換させていく必要があります。
こうした考え方を「ナレッジマネジメント」と言いますが、まさにその必要性を強く感じます。
あと十年は短いのかまだ時間があるとみるのか、これからの取り組み方次第。
これが少子高齢化の陰で起きている一つの事象なのです。