京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

大切なものはそっと守る?

2019年02月07日 | 映画・観劇

夫がノーベル文学賞を受賞することになり、授賞式のために二人はストックホルムへ向かう。
教授と教え子の関係から妻となって、夫の作品に妻が手を加える若き日の回想シーン。才能ある妻が夫を支えてきたことが描かれていく。夫は書かれたものを編集する。女性が本を出しても売れない、読み手がないという時代に、その才能はそうやって活かされた。妻は部屋に籠って作品を書き、夫が称賛を浴びる。これを内助の功とは言えまい。

ストックホルムに入って、二人の空気はどことなしに変。「妻は書きません」「彼女は僕の人生の宝です」…。夫のスピーチを聞く妻の顔がこわばる。溢れる感情が映る。妻の怒りは大爆発。二人の間に亀裂が走る。激昂した妻は別れを切り出した。
ストーリーに目新しさもなかったし、こうした何かの瞬間にスイッチが入って大きな溝を生むことは、夫婦間にしばしばあることだろう。覆水盆に返らず…。

40年抱え込んでいて、40年目に堰を切ったようにあふれ出す思い。怒りは言葉となって現れる。さあて、なんの怒り。何を大切に生きてきたのか。
二人をつないできたものは。彼女にとって尊敬と愛情は、別のものだったか。
自分の力なしに夫の名誉もない。だとしたら、妻が書いた作品でスポットライトを浴びる夫と、そうしたシナリオを描き上げる妻とでは、どちらが主役なのだろう。そんなことを考えた映画だった。疑いの目で近づいてきた記者に、妻は最後まで夫の名誉を守ろうとする。


目立たないところでそっと咲く花、大切にしたくなります。
人生でも…。大切なものはそっと守る??
コメント (6)
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