赴けば参りつかねどまづ見ゆる東寺の塔の尊かりけり 浅井了意
昨日は東寺で毎月一回開かれる市、かつては柳宗悦に「何もかも、けじめなく売る」(『京都の朝市』)と言われたほどだが、おせちの食材や迎春用品が売られる終い弘法に出かけた。骨董品、手作りの品々、古着を売る店、タコ焼きに始まる定番の食べ物屋さん等々に合わせて、境内には店がびっしり立ち並んだ。年納めとあって人の出も多かった。日差しは暑くって、陰に入ると「ああ涼しい」と聞こえてくる。
いつもの店でいつものように迎春準備をするので特別な目的はないのだが、年末の風物詩でもあり楽しんでいる。
干し柿、クワイ、子芋、数の子、丹波の黒豆、上賀茂のすぐき漬け、宇治のお茶、伏見の、大原の、鞍馬の…と、産地がわかる佃煮の類もあれば、生花、鉢植えの木のもの、亥年にちなむ置物にカレンダー。新しい年がくるんだなあと思って見歩いた。
店頭に置かれた焼鯖寿しを見て、「これ、お宅で作ったの?」「はい」「お宅が作ったの?」「知り合いが。頼まれて売ってます」、などと高齢の女性が問いかけ、やり取りしていたが「知り合いが?」という言葉を残して立ち去った。他の、この寿司を売る店の前を通りかかると「鰻をつけようかー」って。えーぇ!?だったなあ。

「こんなにサービスしてたら儲けが出ないよー!」。呼び声で人だかりの店は、遠目にもわかるように福岡と掲げて明太子と裂きイカを売っていた。
袋の中から両の手でわんさとつかみ出してプラスチックのパックにガバッと収めてくれるのを、こぼれ落ちないようにとビニール袋の口を広げて待ち受けた。「ありがとうねー」。威勢のいい声はさらに「お金払って行ってよー」と続くのだ。というのも、ちょっとだけコーナーを変えた、明太子をてんこ盛りにしているお兄さん?のところで支払うことになるから。パックの裏面には、博多駅前だという製造者名に、「むしりいか」と記されたラベルが貼ってあった。
みんな好きだったなあと思い浮かぶ相手がいることで、せっかく来たし買って帰ろうと思わせてくれる。ただ、娘の夫だけは好まないのだけれど。
今日は冬至。