新聞の広告で見かけた「この感情は何だろう 新潮文庫の100冊」。
夏だから、
〈約束の海で砂の女とはしゃいでみるのはどうだろう。〉から始まって、〈神様のボートで夜のピクニックをしたり、老人と海をながめたり。月の上の観覧車で「さよなら」が知ってるたくさんのことをかみしめるのも。遠くの声に耳を澄ませて、あの懐かしい夏の庭へ出かけるのもいいかもしれない。あるいは金閣寺から羅生門へ、シャボン玉を飛ばしてみる。楽園のカンヴァスで「弱くても勝てます」と叫んでみる。吾輩も猫である、とくつろいでみる〉と続き、〈こころを込めてこの思いを、きみの夏にツナグ。〉で終わる。
きみのことを思ったら、この100冊になりました。
文庫本100冊の表題がこの文章の中に含まれているのだろう。文脈など辿っていたら頭がややこしくなり、したがってタイトルらしき文言を追った。こんなタイトルの本があるのかも、と推測するだけのものは除外し、書店でか紙上でか、どこかで記憶に留めたものは含め、知っているとしたのは40冊だった。読んだ作品に限ればさらにぐんと少ない。この夏、読む一冊があるだろうか。きっと読まない。読み直さない。
友人たちと直木賞受賞作品をそれぞれに出し合って、「夏休み」の課題図書としてきた時期があった。時間を作り出して読むわけなので、分量や好みを探りつしての「忖度」はあるが、これならと思うところで自分の好みも加え推奨しあったようだ。読み切れず秋に持ち越したこともある。自分では選ばない作品に出会える機会になるのが面白かった。
【本を愛する者は、おしなべて若さがみなぎり、輝いている事実を知った。女性は美人ばかりである。眼に張りがあるせいである。活字で洗われたまなこには、一点の曇りも無い。男性は、賤しさがない。どちらも、言葉遣いが垢抜けている。語彙が豊かである。】
と半世紀余り古本屋稼業を営み、本に囲まれて暮らす人を数多く見てきた出久根達郎氏が著書で語っている(『本と暮らせば』)。
「いいことづくめ」に、あやかりたいもの。まだ時間はありそうだし…。
夢枕獏さんの作品を読んだことありますか?