京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

寄り合うことを楽しむ

2024年07月19日 | 日々の暮らしの中で
明日は尼講さんが寄り合って、住職の読経とお話のあと、一緒に昼のお膳を囲んでひとときを過ごします。
基本的に月に一度。ただ8月の盆月はお休みとしているので、予定通りお汁を炊くことになりました。

お花も立て替えたし、先ほど本堂に座卓のテーブルを4つ、阿弥陀さまに向かって正面に2つ、両サイドに一つずつ、コの字の形で並べてきた。
外へ出てみると、左下が幾分欠けてはいるが大きなお月さんが上がっていた。


当番の組が大勢で寄るよりも、高齢者メンバーの中でも“若め”代表の選ばれし2人と私を含めた3人で、なんとか手際よく進めてしまおうと決めたのは、とにかく暑いからです。

「仏さんに」と持ち寄ってくださった野菜もそろい、明日は生き仏の口に入ります。
お汁の具を切りさえすれば、おくどさんに火を入れて炊くだけ。
それぞれに味自慢のお漬け物を小鉢に盛り分けるくらいのことは、きっとどなたかがしてくれるので、おまかせです。
いつものように、お汁と漬け物と、…?で。白米は持参です。が、万が一のために我が家で炊いておきます。

こうしたお膳を囲むにも、当番さんの働きはもちろんのこと、野菜を提供くださる方々の日ごろの丹精などがあってのことを思います。

私の父も祖母に連れられてお講さんでお汁をよばれたことがあった、と何度か聞かされていたことがふと思い出されました。
この本堂のどこかに、子供だった父が座っていたのです。

何十年と、100年のようにもなるのか、代々のご門徒の女人たちによって営まれてきたお講さん。さほど濃い宗教色はなく、〈寄り合うことを楽しむ〉といった色合いが強い。
人と人がつながる、関わり合える場になればよいと私は思っています。


とは言っても、ともに大きな船に乗り合わせたもの同士…の信仰の原点はひそんでいるのでしょう。
互いに生かし生かされて…。
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12の人生

2024年07月17日 | こんな本も読んでみた
芥川の作品集や『掌の小説』(川端康成)の中から時おりランダムに読み返すことはあるけれど、どちらかと言えば好まないということもあって、進んで短編小説を読むことは本当にまれだと思っている。
そんな中で、ずいぶんかかったけれど澤田ふじ子さんの『花暦 - 花にかかわる十二の短編』を大満足の中で読み終えた。


一編ごとに、ヒロインの日々の営みの中で花が深い関わりを持ち、運命さえも変えていく展開を見せる。

限られた紙面(原稿用紙13枚だとか)の中で、歴史や風土、文化、人情にも触れた12の人生を見せられながら、澤田ふじ子が描く世界のつながりの色濃さが、読後の満足感となったようだ。
もちろん構成の巧みさも大きい。
ひとつ読み終えるたびに、(おぉー!)(いい!)(巧いなー!!)と唸った。
久々に短編の妙味を味わった気がしている。

無駄を省いた端正な文章。語り過ぎない中で、繊細な思いが込められている。
とりわけ結末部分については、語られない行間に感動が生まれる。

〈いいたいことすべて書く必要はありません。
 短い文章で書き尽くせば(言い尽くせば)よいのです〉
乙川勇三郎氏の作品にあった一節だが、改めて心に刻みなおしたい。


空が暗くなって一雨あったりしたが、そろそろ梅雨明けになるのだろうか。
花茎を伸ばしハゼランの花が咲きだして、葉陰にはこんな茶っぽい小さな蛙が2匹姿を見せるようになった。

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「またね」と

2024年07月15日 | 日々の暮らしの中で
今夜21時45分の便で日本を離れ、ブリスベン空港へと直行です。
今年に入って直行便が再開されました。

昨日、名古屋のお身内のところで過ごしていたK*Rさんと合流。今日は大阪に住む親友2人が関空まで見送りに来てくれているとのこと。

 

帰りを待つ弟たちや両親へのお土産を用意して、スーツケースも手荷物もパンパン! 
無事に少しでも早く親元へと思うとき、直行便があることは本当にありがたい。

姿が無くなり家の中にぽっかりとした空間が生まれ、寂しさを感じている。
別れたあと、もう一度も二度も名残を惜しむのだろう。

どんな話をしたんだったっけ?
なにに笑い転げたのだったかな?
どういうことを喜んでいたんだったか…。
そういえば、大学の来期の選択科目を登録していた。
難しそうだね…、でも面白そうだと(よくわからないままに)応援。
そうやって一歩一歩、自身の人生の方向づけをしていくんだよね、と話したっけ。

こうしてJessieとの思い出を心に深くとどめつつ、一区切りつけよう。
日々担う自分の務めを果たし、できるだけいそいそと、まめやかに生きていくとしよう。

   一日をゆっくり見つめ
   ゆっくり書いて
   ゆっくり生きて                高木護



「またね」と送信した。
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モンキーパーク 檻の中には

2024年07月11日 | こんなところ訪ねて
「嵐山のところにあるモンキーパーク、知ってる?」
昨年11月末にやって来た時からこう口にしていた孫娘でした。
あのときは「この寒いのに」とかわしたものの今回まで「この暑いのに」とばかり言ってもおられず、昨日彼女の希望をかなえようと嵐山モンキーパークに行ってみたのです。



渡月橋、さらに小橋を南に渡って右折、この道歩くの初めてです。


階段を上って入園料を払い、ミストで涼んでから、ぐるぐる回りこむように続くかなりの急坂を登って登って、途中「まだぁ!?」と幾度も思いながらマイペースを心がけて登り切りました。
(この程度ならまだ十分自分にも歩けるわ)なんて、根拠があるのかないのか自信も取り戻しましたがね。




標高160mとありました、いわたやま。
下りてくるのは外国のひとばっかり。登りで前後するのも、下り道で上がって来る人たちも、外国人ばかりです。小学生ぐらいの子供たちもいます。
入り口近くで浴衣姿の女性二人とすれ違いましたが、あんな格好ではさぞや大汗かいて厳しい山登りになったことだろうと思うのです。
登っては下りる、この循環が絶えることなく続くいわた山。
嵐山駅周辺の混雑はこの日も相当なものでしたが、モンキーパークがこんなに人気の観光地だとは初めて知ることになりました。
帰りの嵐電も、乗っている日本人は私一人かと思うほど。

園内、それほどお猿さんの姿を見かけませんでしたが、餌をやるのは休憩所の中からだけでという指定です。


人間が囲い・檻に入って外のお猿さんにエサやりする。おかしな構図だね、と写真を添付してLINEで娘家族と笑うのでした。


コメント (2)
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竹生島 “マダムアイランド”と言って

2024年07月06日 | こんなところ訪ねて
冬休み中の孫娘はこの1日に京都へとやってきました。同行の友人は名古屋のお身内のところへ。一緒に帰国する二人は、その前日14日に大阪で合流です。


梅雨の晴れ間となった3日。前夜から予定して竹生島へと向かった。
かつて、竹生島には弁財天が祀られていることを話したことがあって(’17.1)、そのとき彼女は竹生島を“マダムアイランド”などと名付けたりしていた。ところが今ではそんなことこれっぽっちも記憶にもないのだそうな。



わずか35分ほどの乗船だが、島へと向かう前方、もやった周囲の山並みの上空に渡岸寺の、赤後寺の観音さまの姿が現れたら!?…などと想像しながら風景を眺めていた。
どうしたって、あの満月の夜のシーンが思い浮かぶのだった。

一番水深が深いとされる竹生島付近でのボート転覆事故で、娘を喪った父親(架山)と、息子を喪った父親(大三浦)が湖岸の十一面観音を巡礼することで、その悲しみを昇華させていく話が井上靖の『星と祭り』で描かれている。
子供たちが眠っている場所に二人が貸しボートを出したのは、事件から8年を経た満月の夜。

【 湖北の中でも、一番北の善龍寺の十一面観音さまが、その左手に海津の宗正寺の観音さま、
右手には医王寺の観音さま。
そして鶏足寺の観音さま、渡岸寺の観音さま、充満寺の観音さま、赤後寺の観音さま、知善寺の観音さまが、さらに長命寺、福林寺、蓮長寺、円満寺、盛安寺、園城寺、衆生来迎寺と、
寺々の十一面観音像が次々に姿を現し、すくっと立ち並ぶ 】

「もがり」の本質を見たようでもあり、物語のこのラストは印象深く忘れられない。今では実際に拝観した観音像も多くあって、二人連れながら一人物思いに馳せる、そんな時間も生まれた。

現実はー。


行基による開創で、弁財天が祀られる宝厳寺本堂 

Jessieはしきりにスマホのカメラを向け、時には父親に中継。
「ダディは絶対あの階段上れへんと思う」と言っている。

宝厳寺渡廊

秀吉の御座船の部材で建てられたという伝承があって、〈舟廊下〉と呼ばれている

急斜面に舞台づくりで建つ



湖北路をめぐるウォーキングツアーに参加して、葛籠尾崎の山中から眼下に望んだ竹生島(2013.7.16)


車窓から湖東平野の緑の青田に目を奪われ、安土風土記の丘、彦根城など遠望し、居眠りする間もなく二人旅を楽しんだ良い一日でした。
今日は大阪に住まいしていたときの親友と過ごすために泊りがけで出かけていきました。



コメント (4)
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