京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

懸想文を売る

2023年02月02日 | こんなところ訪ねて

聖護院に近い須賀神社では、節分の日に(その前日と)「懸想文」という独特のお守りが、
烏帽子に水干姿の懸想文売りによって授与される。

平安の昔から京の町々で買い求められたという。
肩に掛けた梅の枝に恋文をつけて売って歩くと、若い娘が飛び出してきたとか。
古くは、祇園社に仕える「絃指」、「弦召」(つるめそ)と呼ばれた人たちが、弓の弦を「つる召そう」と言いながら門付けをして歩いたようだ。
弓の弦をはじくって、神事でもあり、正月のめでたさにも重なるのではなかった?

 

一時途絶え、江戸の前期から、後期には復活したが、ふたたび明治になくなった。
それが今、須賀神社で行事として行われている。
この文を鏡台やたんすの引き出しに隠して入れておくと、顔・形が一層よくなって良縁が早まり、着物も増える、というご利益があるそうな。


古代から中世、近世と、都にはさまざまな職能でもって祝福芸能を担う人たちがいた。
1676年刊『日次(ひなみ)紀事』の正月の項に、

【 此の月初め、(中略)西宮傀儡師・万歳楽・春駒・鳥刺・鳥追・猿舞・大黒舞、人家に往て芸術を施す、(中略)
清水坂の絃指(つるめそ)、赤布を著し、白布を以て顔面を覆ひ、わずかに両眼を露して、紙符を市中に売る。是を懸想文といふ、俗間男女これを買て、男女相思する所の良縁を祈る、(後略)】

といった記述がある。
京都の年中行事が詳細に記されてあり、信用度は高いと聞いた(講座:都の祝福芸能者たち ーその集住地と職能)。

前回来たときほどの人出はなかったが、氏子さんや関係者が広くはない境内にたくさん詰めておられた。
見るだけ~。興味本位丸出し。多くはみんなそうだろうと思いながらも、もろにカメラを向けるのが申し訳ないような。
で、ささっと数枚撮らせていただいた。
縁起物、買ってみればよかったのかな…。
コメント (4)
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