京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

奇跡と呼ばれた映画

2023年02月25日 | 映画・観劇
「SNSで話題になり異例のヒットを続けたが、共産党大会を目前にした昨秋から突然上映されなくなった、と欧州メディアが伝えている。真相は不明だが、貧しくとも正直に働いて人を思いやる者が搾取され、不平等が拡大する「近代化」の現実への批判だと睨まれたのか。」


中国映画「小さき麦の花」を見た。館内の掲示物に、このようなことを伝える記事があった。
中国の若年層にヒットした映画のようだ。

家族から厄介者扱いされていた二人が結婚させられた。妻の方には手と足に障害があった。
いいように利用され、こき使われて、それでも抵抗することなく寡黙で、すべてを受け入れて生きている。しかし彼は勤勉で正直者だった。
言葉少なだが心を通わせ、いたわりあい慈しみあう。彼らに表情が生まれてきた。たくましさもあった。
貧しくとも慎ましい喜びのある二人の暮らしに、誰かがやってくる。車が近づく…。
もう、疫病神でしかない。

「農民は土を離れて生きていけない」と妻に話す。土地を耕し、小麦の種を蒔き、トウモロコシやジャガイモを育て、収穫に励む。命をつなぐために働くしかない日々の忍耐の強さ。
選択肢などはなく、そうやって生きるしかないとわかっているだけに、見ている側には重くもあった。

町のアパートに入居希望の申請をするのも言われるがまま。そんなある日、妻は川に落ちておぼれ死んでしまった。
国の政策で、空き家を解体するとお金が入る。収穫物も一切を売り払い、二人で造った家を壊す。町での入居が決まっていた。

農民が土を離れ、災厄を一人で抱え込まなければならない日々に、つかめる希望があるだろうか。





古木の白梅はようやく蕾。空洞になってしまっている幹だが、全ては根から得る滋養のおかげ。
コメント (2)
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