興趣つきぬ日々

僅椒亭余白 (きんしょうてい よはく) の美酒・美味探訪 & 世相観察

まどろむ (好きな言葉)

2006-03-24 | 言葉ウォッチング
 漢字で書くと「微睡む」となる。「うとうとと眠る。少しの間眠る。(広辞苑)」という意味である。

 人はふつう極度の緊張を強いられているときにはまどろむことはできない。まどろむことができるのは、どちらかというとリラックスしているときであり、「癒されている」ときであるといえよう。

「まどろむ」という言葉から、わたしはドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」を思い浮かべる。この曲はドビュッシーがマラルメの「牧神の午後」という詩にひらめきを得て作ったものとのことで、この詩には「まどろみ」にひたる牧神が出てくるからだ。

 マラルメの詩は読んだことはないが、「牧神の午後への前奏曲」の(レコードジャケットの)音楽解説によると、詩の内容はこうだ。
 ・・・けだるい夏の昼下がり、まどろみから醒めた牧神(半人半獣の神)が、泉のほとりに遊ぶニンフ(若く美しい女性の妖精)を見つけ、抱擁しようと追いかける。しかし結局逃げられ、またまどろみに沈む・・・。

 ところで、「腹の皮がつっぱると目の皮がたるむ」というが、牧神でなくとも昼飯後はつい眠くなってしまう。そんなとき10分でもウトウトすると、そのあと不思議なほど頭がスッキリしてくるのは誰しも経験があるのではないだろうか。短時間の昼寝はその後の作業効率を上げるとの研究もある。

 しかし現実問題として、会社や学校などの社会生活の中では、そうそう簡単に午睡をとるというわけにはいかない。シエスタは日本では定着しにくい習慣である。
 まどろみの中でニンフを追いかけたいところではあるが・・・。
2006.3.2