3月26日
この日は朝から土砂降り。
その上強い風も吹いて、10時少し前にホテルをチェックアウトして千曲川を渡ると傘が壊れそうなほど。
万葉超音波温泉で一風呂浴びて
戸倉駅まで歩くとあちこちびしょぬれになってしまった。
戸倉駅からは小諸駅まで40分。
ちょうどお昼で、普通ならお蕎麦でも食べに行きたい所だがひどい雨なので街歩きもできない。
幸い駅前が停車場ガーデンなるちょっとした公園になっていて、中にカフェがあるので入ってみる。
片側は工芸品や園芸品なども売っているおしゃれなお店。
予定よりがっつり食べてしまったがおいしかった。
駅から今夜の宿までは徒歩20分のはず。これも歩くつもりだったが雨と寒さに負けて駅前からタクシー。すると思いがけずすごい坂を下って、これは帰りも大変そう。
中棚荘に着いたのは13時。
これは翌朝撮ったが、玄関前にはサンドアーティストによるアマビエ様が。もう半ば崩れかけているのはもうお役目終了ということだろうか。
チェックインは14時からなのでさすがにまだ早い。部屋の用意をしてもらっている間、ロビーの暖炉で温まらせていただく。
大きな額に入っているのは島崎藤村の肖像画で、本棚にも藤村の本がいっぱい。
というのも藤村は小諸で学校の先生をしていた時代、この宿によく来ていたとか。長野ではよく藤村先生に遭遇するが、先生どれだけ温泉が好きだったのやら。しかし藤村の本は一つも読んだことがない。
大きな窓の外には咲き残る梅だろうか、ヤマガラやシジュウカラが来ている。
13時半になって部屋に案内していただく。
フロントのある棟からは渡り廊下を通った平成館の2階。
8畳の部屋にはもう布団が敷かれ、こたつがあるのがうれしい。
意外なのは浴衣の上に羽織る半纏。これがなんとモンベルのダウンで、旅館で遭遇したのは初めてだけれど、軽くて暖かくて、これはいい。
冷えた体を温めるべく、早速お風呂へ向かう。
浴室への扉は部屋から階段を一つ降りたすぐの所にあるが、ここからは石段を50段以上も上がらなければならない。
途中には源泉の飲泉所もあるが、これを過ぎると男湯、女湯はさらに上に上がる。
ようやく女湯に到着して中に入ると
広い畳敷きの脱衣場の先は仕切りもない浴室になっていて、天井の木組みも立派。
浴槽には冬の間はリンゴが浮かべられて、これは藤村にちなんで「初恋りんご風呂」と名付けられている。浴槽の底には藍色の石が敷き詰められ、そこに赤いリンゴがうかぶ様がとても上品。
アルカリ性単純温泉の癖のないお湯は源泉が38℃とぬるめなので循環加温され、内湯では消毒もされている。
が、露天のうたせ湯は源泉そのまま。飲泉所で飲んでみるとわずかに硫黄の卵味が感じられて、この静かなお風呂はいつまでも入っていられる。
ゆったりしているうちに18時になったので、玄関を出て隣の大正館へ。
藤村の泊まった部屋もある旧館、今も客室があるが食事もすべてこちら。他にもお客さんはいるはずなのだがとても静か。
今回は信州の食文化プランというのをお願いしておいたところ
木の芽和えの先付けに始まって、ねっとりととてもおいしい信州サーモンの昆布締め。
鰆には黄色い菜種餡がかけられ、ホタルイカの酢の物は下に敷かれたキャベツもおいしい。
道明寺の上に載せられた甘鯛が春らしいが、驚いたのは天ぷら。なんと佐久鯉の薄い切り身が桜の葉と揚げられていて、これが川魚とは思えないほど臭みもなくおいしい。なんでも最近は鯉の養殖技術が向上して、お刺身で食べることもあるのだとか。
さらに信州らしいのは鍋のおにかけそば。昔の農家で囲炉裏にかけた鍋に手の空いた者がそばを入れて食べたものだそうだが、竹の子やキノコがいっぱい入ったお鍋の出汁もおいしくて完食。
おかげで自家で育てているというお米のアサリご飯は入らなくなってしまった所、お夜食に、とおにぎりにしてくれた。夜食も入らないのでこれはそのまま持ち帰り。
その代わりプルプルのわらび餅はしっかりいただいた。
翌朝はお部屋も変わって
リンゴジュースで始まる朝食も手のかけられたおかずにとろろご飯がおいしくて完食。
食後は腹ごなしに外に出てみると、大正館は思いがけず洋風の造り。
庭の狸の蓑ももうすぐ取れるだろう。
こちらは泊まった部屋のある平成館。その前の庭にはなぜか山羊が飼われている。
玄関前から坂を上がって道路に出るとお向かいに「初恋ポスト」と看板の出ているポストがあったが、何の変哲もない丸型ポストなのは残念。
すぐ脇は小諸城址の懐古園だが、目の前は普通の田んぼや民家の並ぶ里山の風景。
何かが突出しているわけではないが、すべてが上品で穏やかな中棚荘は素敵な宿だった。
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一般向けしませんよね。
私も食べたことはありませんし食べたくもないけど、出たら一匹ぐらい味わってみるかも。
佃煮になっていると言われなければわかりません。
甘くておいしかったですよ。