文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:私だけの仏教

2014-07-02 19:49:56 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
私だけの仏教 あなただけの仏教入門 (PHP文庫)
クリエーター情報なし
PHP研究所



 芥川賞作家にして、臨済宗寺院の住職である玄侑宗久氏による「私だけの仏教」(PHP文庫)

 本書の説くところを一言で表わせば、ヴァイキング方式で、自分だけの仏教を作ってみないかということだ。ヴァイキング方式とは、仏教各宗派から、自分にあったものを取り出して、自分専用にアレンジするというものである。

 著者は言う。我が国の仏教各宗派のなかに、<正統の仏教というのが存在するわけではない。いずれも独自の切り口で仏教の一部を強調しながら、ある種の奇形として発展し、結果的には現在まで「八百万」状態で共存してきたのである> 

 そのうえ、我が国の仏教は、中国、朝鮮半島経由で入って来たので、道教や儒教の影響も受けており、そもそも純粋の仏教とも言えない。 だから、各宗派のいいところを自分なりにチョイスして、自分独自の仏教を作り上げても、構わないだろう。本書では、仏教で使われる様々な概念や各宗派の特徴についてヴァイキングのメニューになぞらえて解説するとともに、学ぶ際の心構えなどについても説かれている。

 元々仏教は、他の宗教の神々を取り込むほどの度量を持った宗教である。諸天は、ヒンドゥー教の神々だったし、日本では八百万の神々と混合した。キリスト教が禁止されていた時代には、隠れキリシタンの間でマリア観音が信仰された。

 だから、仏教に限らず、ギリシア神話の神々やキリスト教の天使たちを崇拝したり、色々な宗教のいいとこ取りをしてもいいのではないか。人間とは、何か心の拠り所のようなものが必要な存在なのだろう。本書を参考に、そんなことを模索してみるのも良いと思う。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。
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