ジェネレーション・オブ・カオス〈3〉時の封印 (ファミ通文庫) | |
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桜庭一樹の初期の作品と言うことで入手した「ジェネレーション・オブ・カオス3 時の封印」(ファミ通文庫)。買ってみてふと気が付いた。タイトルに「3」の数字がついているのだから1も2もあると考えるのが普通だ。しかし、表紙カバーに印刷されている、作品リストには、それらしいものは掲載されていないのだ。
実はこれ、「ジェネレーション・オブ・カオス3 時の封印」というゲームのノベライズ版なのである。元のゲームそのものに「3」の数字が付いている(もし数字を付けないと、シリーズの別のゲームになってしまう)のだ。だからそのノベライズ版の方にも「3」が付いているということで、この作品が、シリーズものの3巻目というわけではない。だから、話は、この1冊で完結している。文体は、現在の桜庭作品とかなり違うのだが、これはこれでなかなか楽しめる。
内容は、ラディア王国と、ゼノン強国との戦争とラディアの軍神と称えられる、美貌の女剣士レアの「光の獣」の「封印」の謎を求める探索。主人公は、ラディアの部下で、王アルフィドの幼馴染でもある、「戦場を駆ける一陣の風」と渾名される、剣士ウェレス・ミドル。
このキャラたちが、何とも魅力的だ。レアは、白銀の髪をした戦闘派美女。ウェレスは、戦場では血に飢えた獣のようだが、普段は、ちょっと空気が読めないところもある気のいい少年でいつも妹のティーファにがみがみ言われている。ティーファはとても可愛らしい娘で、アルフィドと互いに思いあっている。そして、アルフィドは、女に生まれれば絶世の美女になったのにと言われているくらいのイケメンだ。その他、戦闘タイプのエルフの娘ミリアや男装の美剣士ハイドといった面々も外せない。こういった色々な趣味の方のニーズに応えてくれそうなキャラが大サービスてんこ盛りなのである。
これに、封印の謎、ラディア王家の血の秘密といったミステリー的な要素も組み込まれてなかなか読みごたえがある。憎しみが憎しみを呼ぶ戦争の悲惨さといったものも織り込まれており、ストーリーに深みもある。
残念なのは、剣士が魔法使いに対して弱すぎること。剣士としては比類なき強さを誇るレアが、エルフの長老や、敵の魔術師にあっという間にやられてしまうのだ。ここは、剣気により、敵の魔術を跳ね返すといったようなことでもしないと、結局は魔術師が一番強いということになって面白くない。また、なかなか魅力的だった戦闘型エルフの少女ミリアが早いうちに死んでしまうのは残念だ。ちょっと、退場が早すぎるのではないか。
そして、終わりがかなり唐突な感じだということ。普通なら、ここで次巻に続くとなり、少なくとも全部で3巻くらいにはなりそうなのだが、これからというところで終わっているのだ。その後のことが窺える記述は、エピローグ的に書かれた、僅か2ページだけなのである。これは、ゲームのノベライズ版ということでいたしかたないのだろうか。しかし、できればこの続きを読みたかった。
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