文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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世にも不思議で美しい「相対性理論」 (素晴らしきサイエンス)

2017-07-04 11:42:11 | 書評:学術教養(科学・工学)
世にも不思議で美しい「相対性理論」 (素晴らしきサイエンス)
クリエーター情報なし
実務教育出版

・佐藤勝彦

 相対性理論や宇宙物理学に関して多くの著書がある佐藤勝彦さんによる「相対性理論」の一般向け入門書。佐藤さんは、宇宙が出来た後、急激に膨張したという「インフレーション理論」を提唱したことで知られている。

 物理学を多少でも学んだ人なら常識といってもいいだろうが、「相対性理論」には「特殊」と「一般」がある。「特殊相対性理論」はアインシュタインが1905年に発表したものだが、慣性系同士の間で成り立つ理論だ。慣性系というのは、もし物体になにも外力が加わらなければ、停止しているものはそのまま停止しており、動いているものは、等速直線運動をするという、いわゆる「慣性の法則」が成り立つような座標系である。

 この特殊相対性理論からも、多くの驚くようなことが導かれる。例えば、「同時」ということの相対性、質量とエネルギーの等価性や動いている時計は遅れる、動いている物体は縮んで見えるといったようなことだ。しかし、上述の通り、これは特殊な場合にのみ成り立つ理論である。特殊な理論があれば、これをもっと一般化したいというのが物理学者の「業(ごう)」のようなものだろう。アインシュタインもその例外ではなかった。彼はやがて一般的な加速度系でも成り立つ「一般相対性理論」に行きついたのだ。

 特殊相対性理論自体は、高校生程度の物理の知識があれば、なんとか理解できるようなものだ。事実私も大学2回生のときに、一般教養の一環として履修している。

 ところが、これが一般相対性理論になると段違いに難しくなってくる。門外漢にはあまりなじみのないリーマン幾何学という数学を使わなければならないからだ。リーマン幾何学とは、端的に言えば、真っすぐな空間で成り立つユークリッド幾何学とは異なり、曲がった空間を扱う幾何学である。結論として出てくるアインシュタイン方程式自体は美しいが、これを実際に解くのは至難の業だろう。

 しかし世の中には天才と言われる人がいるもので、この方程式を解いて、そこからブラックホールだの、膨張宇宙だのといった驚くような結論を導き出してしまう。

 本書は、これら相対性理論に関する基本的な話から初めて、この理論から導かれるさまざまの現象について初心者向けに分かりやすく解説している。図が多いこともあるのだろうか、佐藤さんが書いている他の入門書よりはずっと初心者向けのような気がする。また、今話題の重力波の話や、タイムトラベルの可能性といった興味深い話も盛り込まれており、多少なりとも物理学に興味がある人、SF好きな人には、面白く読めるだろう。

 なお本書は、「本が好き!」さまを通じてのいただきものです。ありがとうございました。

☆☆☆☆

 ※初出は、「本が好き!」です。



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