地理 2017年 07 月号 [雑誌] | |
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古今書院 |
最近、この雑誌の専属レビュアー化している気もしないではないが、面白いんだから仕方がない(笑)。
ところで、皆さんは地理というとどのようなものを想像するだろうか。地図帳をどんと広げて、日本の首都は東京だとか、富士山はこの辺りにあってとか、山形県はサクランボの産地とか、そういったことをひたすら暗記させられる退屈な科目だと思っていなかっただろうか。確かに高校以下で教えている地理にはそんな側面があり、私も地理は大嫌いな科目の一つだった。
ところが縁あってこの雑誌を読むようになってから、そのような先入観ががらりと覆った。例えば、この7月号の特集は、「北極 地球温暖化がもたらすもの」であり、その内容は、我々の思っている地理の枠内を遥かに超えて、地球科学、気象学、文化人類学や政治学などにまたがっており、非常に広い範囲の話題を提供してくれる。
例えば、温暖化や酸性化により北極海の生態系が影響を受けていること、温暖化の影響で影響凍土の解ける深さが深くなり、それが地形の変化だけでなく、人間生活にも影響を及ぼしていること、北極における国際的な協力・共存関係が進展していることなどがこの特集では解説されているのだ。一般に地理は人文科学に分類されるが、掲載されている記事を読むと、とてもその範疇にあるものとは思えない。
それもそのはず。執筆者の経歴を眺めてみると、地球環境科学、理学といった理系分野とされる方面の研究者の割合が多いのである。
書評欄にも興味深いものが紹介されている。「視覚でとらえるフォトサイエンス地学図録」(数研出版)という本だ。タイトルを読むと分かるように「地理」ではなく「地学」なのだ。
高校までは、「地理」とは社会の一教科。「地学」とは理科の一教科というように分類されてしまっている。しかし、本書を読む限りは、そのような分類はナンセンスだとしか言いようがないものである。本書により、そのような読者の先入観が少しでも薄れることを願いたい。
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※初出は、「本が好き!」です。