イナカ川柳 農作業 しなくてよいは ウソだった | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
・TV Bros.編集部
本書は、TV Bros.というテレビ情報誌の投稿企画に10年に渡り連載されたものから約400句を精選して取りまとめたものだ。田舎育ちの私としては、「あるある」とつい頷いてしまうような愉快な句が多い。その中から特に気に入ったものを紹介してみよう。
「農作業 しなくてよいは ウソだった」(表紙)
これは、表紙に掲載されているものだが、ダンナが田舎出身だとこのようなことがあるんだよね。田舎は嫁不足だから、結婚するときには「農作業なんてしなくてよい」なんてうまいことを言われるが、結婚してしまうと「釣った魚にはエサはやらない」とばかりに、180度手のひら返し。農業というのは労働集約的な仕事なので、結局は手伝う羽目になってしまう。
もっとも日本の女性の方だって、そんな甘言に釣られたりしない。だから、
「気が付けば隣の嫁は外国人」(p53)
などということになってしまうのさ。
しかし、田舎の人は逞しい。次の句のようなことも珍しくはないだろう。
「ヘビが出た。近所のじじいが酒にした」(p48)
ただヘビといっても青大将とかシマヘビを酒に漬けたという話はあまり聞かない。漬けるなら、なんといっても毒ヘビに限るということで、やはり沖縄ならハブ、それ以外ならマムシといったところだろうか。そういえば、昔仕事で、交通機関もろくにないような場所にタクシーで行った際に、ドライバーさんが(まだ若かったように記憶しているが)、盛んにマムシの焼酎付けの自慢をしていたのを思い出した。なんでも、水虫にはよく効くとか・・・。
収められている川柳はどれも、田舎の不便さを開き直り、それをユーモアに変えている。田舎育ちの人はもちろん共感できるようなことばかりだろうし、都会育ちの人も田舎というワンダーランドの様子を楽しんで欲しい。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。