この作品は、昨年、出版社3社を横断する形で刊行されたもののうち、2番目に当たる。話の中心となるのは、前巻と同じく京極堂の妹で科学雑誌稀譚月報の記者である中禅寺敦子と「絡新婦の理(じょろうぐものことわり)」に出てきた女子高生の呉美由紀。
物語は、美由紀とその友人たちが、河童談義、尻談義を行っている場面から始まる。尻談義は、河童が尻子玉を抜くという話から来ている。女三人寄ると姦しいというが、彼女たちの話がなんともいえず面白いのだ。それにしても、河童に対していろいろな呼び方があるものだ。
この作品でも、ヘンな人が出てくる。ヘンな人と言うと、榎木津や、敦子の兄の京極堂などがその最たるものだ。関口もかなりヘンな人に分類されるだろう。この作品に出てくるのは、多々良勝五郎という在野の妖怪研究家。この先生、主役を務める「今昔続百鬼」という作品があるので、こちらでもレギュラーになるのかと思いきや、次の巻の天狗には名前しか出てこなかった。
夷隅川水系で相次いで死体が見つかる。その共通項は、尻が丸出しになっていたということ。果たして河童の仕業なのか?
この作品で扱われているのは、戦後の物資横流しや迷信に基づいた差別など。しかしやっぱり、京極堂の付き物落としや榎木津のハチャメチャぶりが懐かしい。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。