鬼娘といってもラ〇ちゃんではない。そして、タネも仕掛けもある話だ。確かに犯人は娘だったのだが、服装も白地の浴衣に跣足(はだし)で、決して、トラ模様のビキニなんて来ていない。なにしろ江戸時代の話だ。あの時代にはビキニがあったとは考えられない。ましてや宇宙人などではない。
と前置きはさておき、本作も岡本綺堂の「半七捕物帳」の中の1作だ。江戸で3件の連続殺人事件が起きた。被害者は若い娘で、いずれも喉笛をかみ切られていた。鬼なら、ムシャムシャと被害者を食べそうなものだが、みな喉笛をかみ切られただけ。
この作品、ミステリーとしての出来はどうだろう。正直に言うとあまり良いとは言えない。読んでいると、なんとなくネタが想像できるのだ。
半七は袂をさぐって、鼻紙にひねったものを出すと、庄太は大事そうにそれを開けて見た。
「こんなものをどこで見つけたんですえ」
「それは露路の奥の垣根に引っかかっていたのよ。勿論、あすこらのことだから何がくぐるめえものでもねえが、なにしろそれは獣物の毛に相違ねえ」
想像通りの結末になるのは、予定調和というところだろうか。この半七捕物帳には、最初ホラー風味の味付けがされ、結局タネも仕掛けもありましたというものが多い。この話もその芸風を継いだ作品と言えるかもしれない。
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。