本書は、法医昆虫学捜査官シリーズの5作目だ。舞台は伊豆諸島の神ノ出島。色々調べてみたが、この島は架空の島のようで、伊豆諸島には、神津島という島があるので、ここがモデルだと思われる。
このシリーズは法医昆虫学者の赤堀先生と、警視庁の岩楯警部補そして所轄から一人参加するというスタイルで行っている。今回は新島南署の兵藤晃平巡査部長。ちなみに新島署というのはあるようだが、新島南署はないようだ。新島署は、神津島も所管地区になり、駐在所もある。
大体所轄から参加する警官は、死体に湧いた蛆ボールの洗礼を受けるのだが、今回、見つかった死体は一部を蛆に食われた跡はあるものの、割ときれいなミイラ。西峰果歩という若い女性だ。この死体の謎に挑戦するのが、我らが赤堀先生という訳だ。
今回の主役は蛆ではなく、アリ。それもアカカミアリという特定外来生物である。あのヒアリの近縁種で、毒針を持っており、刺されると重篤なアナフィラキシーショックを起こすことがある。蠅はあまり登場しない代わりに、蠅のようなマスコミは登場し、この作品は、マスコミに対する皮肉にもなっているように思う。
この事件が大量のミイラ死体の発見に繋がったり、別の殺人事件に繋がったりと以外な展開を見せる。そして犯人も。
赤堀先生が犯人に殺されかけるというのもお約束。もちろんこの作品でもそういった場面がある。
「毎度のことだが、赤堀ほど体を張っている者はいない。しかし、このままでは駄目だと岩楯は思っていた。彼女の仕事の性質上、いつかは取り返しのつかない場面が訪れる。(以下略)」(p481)
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※初出は「風竜胆の書評」です。