文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

銭形平次捕物控 267 百草園の娘

2021-11-05 08:28:58 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

「親分、あつしの身體が匂やしませんか」



 この話も八五郎と平次のいつもの掛け合いで始まる。面白いのは平次の返し。

「さてね、お前には腋臭が無かつた筈だし、感心に汗臭くもないやうだ、臭いと言へばお互ひに貧乏臭いが――」



 なんだか平次、八五郎をからかうのが生きがいになっているようだ(笑)。

 それにしても、八五郎が若く美人な娘に弱いのは相変わらず。こんどの相手は、板橋の百草園の娘お玉らしい。百草園というのは、私設の薬草園で、この百草園は本草學者小峰凉庵が生きていた1年前までは、加賀家の庇護を受けていたが、今はもう援助もなくなってしまったようだ。

 お玉はその小峰凉庵の忘れ形見で、八五郎に言わせれば生身の辨天樣と言う位に美人の娘らしい。そのお玉を争って、凉庵の内弟子横井源太郎と打越金彌の二人が争っていた。

 この百草園を舞台に連続殺人事件が起こる。まず、横井源太郎が毒殺され、下男の爲吉が匕首で腹をえぐられ、打越金彌が毒殺される。

 この事件に乗り出してくるのが平次なわけだが、事件の真相を見抜いた平次は、そのまま帰っていく。平次は、四角四面にそれが法に定められているから、犯人を逮捕するのが自分の仕事だ、というような今の刑事ドラマのような真似はしない。それどころか、事件の謎解きをしても、殺されてもいいような奴が殺された場合は、「オラ知らね」とばかりにケツをまくるのだ。これも平次の魅力の一つだと思う。

「それでお仕舞ひさ、さア、歸らうか、八」
 平次はもう立上つて歸り仕度をするのです。
「下手人は親分?」
「横井源太郎の幽靈とでもして置け」
☆☆☆☆

 

 

 

 

 

コメント
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