文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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赤人の諦観

2023-05-05 11:52:25 | 書評:学術・教養(人文・社会他)

 

 山柿(さんし)の門という言葉がある。つまり山とつく人と柿のつく人は、歌人が参考にすべき人たちであり、歌の道とほぼ同義で使われる。柿はほぼ柿本人麻呂だとされているが、山の方は多くが山部赤人としているものの、山上億良と言う説もあるようだ。本書では山を山部赤人として扱っている。柿本人麻呂も山部赤人も代表的な万葉歌人である。そしてタイトルにある赤人とは山部赤人のことである。この書で展開されるのは故梅原猛さんの赤人論。

 定説では、赤人は自然詩人・情景詩人とされている。闘う哲学者である梅原さんは、これに異を唱える。赤人は、自然の背後にある神々や霊魂をみており、自然詩人というよりは、歴史詩人、叙事詩人、鎮魂の詩人と呼ばれるべきものだという。なにしろ「水底の歌」において、人丸刑死説を唱えた梅原さんだ。赤人論においても、定説に対して反旗を翻している。この辺りは、梅原さんの面目躍如というところか。

 梅原さんは、歌の解釈としての定説に異論を唱える。しかし、この方面には賀茂真淵の影響が強いことが分かる。これも大ボスの言う事が定説として扱われる人文系の学問の一つの特徴か。

 ただ、やはり扱う題材のせいだろうか。柿本人麻呂論と比べると、それほどショッキングな内容と言う気はしない。また、梅原節の特徴として、騙りすぎるのだ。この本にしても、文庫本ではじめにからあとがきまで450頁近くもある。しかし、よほど慣れた人でないと意味を取りにくいのではないかと思う。少なくとも私にはそうであった。そして多くの部分に柿本人麻呂がひき合いに出されるので、いったい梅原さんは赤人について述べたいのか人麻呂について述べたいのかと思ってしまう。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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