文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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幻影の手術室: 天久鷹央の事件カルテ

2023-05-09 11:53:07 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 現役の医師でもある著者の天久鷹央シリーズの一つ。この巻では、小鳥遊の天敵?の研修医、鴻ノ池舞がもう少しで逮捕されるところだった。

 舞が清話総合病院で虫垂炎の手術をしたのだ。なぜ、舞が自分が働いている天医会総合病院にかからなかったかというと、もし婦人科系の病気だったときに、知り合いに婦人科の診察を受けるのが恥ずかしかったらしい。天真爛漫、傍若無人に見える舞だが、そういった感情はあるようだ。普通は虫垂炎の手術は、日本では普通腰椎麻酔で行われるが、穿孔して、腹腔内が汚染されている可能性もあるということで全身麻酔で行われた。

 ところが、その手術が行われた第八手術室で、麻酔科医の湯浅春也が殺される。手術室には湯浅と舞しかいなかった。そして湯浅が殺される直前透明人間と格闘しているような姿がモニターに映されていた。湯浅はなぜか舞に筋弛緩剤を投与しようとしていた。

 舞が犯人とされたのは、湯浅と舞以外に手術室には誰もいなかったこと。湯浅が舞の元彼だったこと、そして舞が血だらけのメスを持っていたころからだ。しかし、全身麻酔から覚めたばかりの患者が、果たして殺人なんかできるだろうか。

 日本のミステリーには一つのパターンがある。警察が頓珍漢な決めつけをして誤認逮捕をするか、しようとする。専門家に意見を聞けばいいのに、プライドばかり高く、思い込みだけで無茶苦茶なストーリーを作って、無実の人間を罪に落とそうとする。そういったとき、正義の味方の名探偵役が現れ、見事事件を解決に導くのである。その名探偵役が鷹央と小鳥遊という訳だ。もちろん舞は無実。

 面白いのは、事件を捜査するため、小鳥遊が天医会をクビになって、スパイとして清和総合病院に送り込まれること。いつも鷹央に振り回されている小鳥遊だが、お守りも大変だねえ。まあ頑張れとしか言いようがないが(笑)。

 著者の持ち味である医療知識を取り入れた、医療ミステリーだろう。ミステリーマニアには、トリックを推理するのが楽しみと言う人がいる。でも、余程医療関係の知識がないとこのシリーズに出てくるようなトリックは見抜けないのではないだろうか。裏を返せば、そういうこともあるのかといい刺激になると思う。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

コメント
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