文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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銭形平次捕物控 108 がらツ八手柄話

2021-09-16 09:07:08 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 いつものように子分のガラツ八(八五郎)が平次親分のところに飛び込んできた。御金御用達の藤屋の3つになる息子が井戸に身を投げたというのだ。井戸側の高さは二尺位あり、子供の首位まであるので、間違って落ちたというのは考えにくい。しかし、3つの子が井戸側に梯子をかけて、自分から身を投げる訳はない。もちろん事故ではなく事件である。平次が乗り出すかと思ったが、八五郎にこの事件を任せてしまう。

「そいつは御免を蒙らう。今日は少し血の道が起きてゐるんだ」(中略)
「血の道はお静じゃない、俺だよ」
「ヘエー親分が、血の道をね?」
「眩暈がして、胸が惡くて、無闇に腹が立って――」
「そいつは二日酔ぢゃありませんか」
「男の二日酔は血の道さ。今日は一日金持の隠居のやうに、暢気な心持でゐたいよ。お前が一人で埒をあけて來るが宜い。赤ん坊が井戸に落っこったくらゐのことで、八五郎兄哥を働かせちゃ濟まねえが、満兩分限の藤屋の一と種が變な死様をしたのなら、思いのほか奥行のあることかも知れないよ」



 平次は小説版を読むと結構こんなところがあるが、実は今回は、八五郎に手柄を立てさせてやろうという親心いや親分心。ヒントを与えて八五郎を送り出す。

 事件はちゃんと解決するのだが、ステップごとに八五郎は平次に報告し、平次に指図を受ける。だがそれをバカ正直に与力の笹野に言っているのだ。八五郎は平次の親分心が分からなかったようである。

繩を打つて引つ立てて行くと、笹野の旦那が褒めましたぜ。これが八五郎の手柄か、大したことだね――つて」
「お前は何んと言つた」
「實は親分に相談をして、一々指圖をして貰ひました。と」
「馬鹿野郎。何んだつてそんな餘計な事を言ふんだ。ムズムズし乍ら、家に引込んで居たのは、せめてこれだけでも、まる/\お前の手柄にさせようと思つたからぢやないか」
「へエ、――相濟みません」
 八五郎はピヨコリとお辭儀をしました。でも、斯かう叱られ乍ら、何んとなく幸福です。



 このあたり憎めない八五郎の性格がよく出ていると思う。それとも叱られて喜ぶドMなのか?

☆☆☆

 

 

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