予知夢 (文春文庫) | |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
・東野 圭吾
・文春文庫
以前テレビで放映されて、人気を博していた「ガリレオ」シリーズ。本書は、そのドラマの原作のひとつに当たる。読みやすくて、面白いのは面白いのだが、ただ褒めるだけでは、私らしさがないので、色々と突っ込んでみたい。
この本も、全巻にあたる「探偵ガリレオ」と同じく、短編集で、収録されている作品は、以下の5編である。
少女の部屋に不法侵入した男は、その少女が、子供の頃夢見た運命の恋人だと主張」:「夢想(ゆめみ)る」
殺人事件が起きた同時刻に殺された女の幽霊が:「霊視(みえ)る」
ポルターガイスト現象の起こる家の秘密:「騒霊(さわ)ぐ」
不思議な絞殺事件:「絞殺(しめ)る」
女が殺される予知夢を見た子供:「予知(し)る」
このシリーズの持ち味は、湯川が、一見オカルトに見える事件に潜む、科学的なトリックを見事解き明かすというものだろう。しかし、最初の2つは、どう考えても、普通のミステリーの謎解きである。理系ミステリーとは言えない。さすがにネタにつまったのか。
ところで、これは、前作から思っていたのだが、湯川の専攻はなんだろう。物理学といっても分野がとてつもなく広いし、アプローチの仕方でも、理論物理学系と実験物理学系がある。理屈っぽいところは、理論物理学系のようだが、それなら、実験なんてほとんどしないだろう。しかし、草薙が訪問したときには、よく、綱引きや、ガラスに電気を通すといったような、天才物理学者にふさわしいとも思えない実験をしている。
「湯川、あんたは『でんじろう先生』か?」
そもそも、使われているトリックは、物理学というより、工学の分野が多いと思う。湯川が物理学者であるという必然性が良く分からない。ぜひとも物理学者でなければ解けない事件というのを期待したいのだが。
また、「騒霊(さわ)ぐ」で、神崎弥生が、草薙刑事に、どうしてあの家が気になるのかと聞かれて、堂々と、「勘です」って、答えている。
「神崎弥生、あんたは『浅見光彦』か?」(ごめんなさい。ここは内田康夫ファンの方しか分からないかもしれません。)
そういえば、結構長い間、このシリーズの新作を読んでないような。続きはでるのかな。
※初出事は、「時空の流離人」です。