チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

ジャスミンティー

2014年03月16日 | お茶

曇、16度、62% 

 香港の飲茶屋さんに日本人ばかりで行くと、こんなことがあります。特に観光客とお店の人が思った場合です。席に案内されると、普通は何のお茶にしますか?と尋ねるウェイターさんが、観光客とおぼしき日本人には何も聞かずに、ジャスミンティーを持ってくることがあります。地元の香港人、一般的にはポーレイティー(プーアールティー)です。確かにポーレイティーは、カビ臭くて色も濃く、はじめての方は随分とびっくりなさいます。中国茶といえどウーロンティーばかりではありません。地方によって、飲むお茶も違ってきます。香港の飲茶屋さんやお茶屋さんは、日本人がジャスミンティーを好きだと信じているようです。

 我が家は、中国茶をよく台湾の方から頂きます。お茶は投機の対象にもなるほど、高いものは信じられないような値段がついています。当然、お土産で頂くお茶は、とても値段のいいものに違いありません。封を切って、中の葉っぱを見ただけである程度の等級がわかります。日本茶と同じく、お茶の葉先、新芽を使ったものは、お高いものです。プーアールティーにいたっては、それをまた永年寝かせるとお値段が高くなります。台湾のお知り合いは、なぜかジャスミンティーばかりはお土産にくださいません。

 ふとした時に、ジャスミンティーがとても恋しくなります。味ではありません。やはり、あの香しい香りです。近くのスーパーででも、簡単にティーバックが手に入りますが、そんなに上等でない普通のルーズリーフのジャスミンティーを自分で買って来ます。 白く見えるのがジャスミンの花です。中国茶は、何もかも熱々にして、葉っぱが開くのを待ちます。中国茶にも茶器のセットがありますが、景徳鎮の螢の湯のみ、日本の小ぶりな急須、茶壺はイギリスのものと、かき集めの茶器たちです。

 

 熱いジャスミンティーの香りを胸まで吸い込むと、いつも同じ場所を思い出します。

 以前、この香港で私は家庭教師の仕事をしていました。家庭教師ですので、教え子たちの各家庭を廻ります。22年間で教えた子供の数も100名近く、伺ったご家庭も70軒ほどでしょうか。その中でも、5年近く教えた子供がいます。彼女の家は、日本人が密集している場所からほんの少し離れたところにありました。門のところに管理人のおじさんがいて、門を開けてくれます。マンションの入り口は自動ドアーでした。ドアーが開くと、人気のない広いエレベータールームには、静かなジャスミンティーの香りがします。暑い時期は殊更に、冷たい空気とジャスミンティーの香りが迎えてくれるのが、何よりの楽しみでした。まだ、啓徳空港があった頃のことです。空港近くのマンションは、いずれも低層で、彼女のマンションはフラットも広く住民も少なかったように覚えています。

 日本のように、芳香剤などではありません。ジャスミンティーの匂いの元はどこかしら?いつも不思議でした。普通のマンションは、このエレベータールームに管理人のおじさんがいます。ところがここは門にいるだけで、エレベータールームには、人の気配すらしません。静かなエレベータールームでした。

 少し離れたところにある彼女のところは、いつも一番最後の授業です。他の子供のところから、10分近く歩いく内に、いつも思い浮かべるのは、あのジャスミンティーの香りでした。なん軒かの家を廻って、ああ、これで今日の最後の仕事、ジャスミンティーの香りが私を寛がせてくれました。

 結局、あのジャスミンティーの香りの出所はわからないままです。広くて、少し薄暗いエレベータールームを満たしていた静かな香りが、時折ジャスミンティーへと私を誘います。

コメント (2)
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