チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

魚のあらのお味噌汁

2014年12月15日 | 日々のこと

曇り、16度、77%

 香港、少しだけ寒くなりました。もう一枚なにか羽織ろうと思うようになるこの時期、決まって会いたくなる人がいます。

 香港のような町に生活して、随分長居しています。主人の仕事関係のお客様も多く、お客様が見えれば中華料理を中心に外食の機会が増えます。なんだか、いつも外食ばかりのようですが、夫婦二人の食事は、基本我が家で普通の日本と同じような食事をいただきます。そんな我が家から数分も歩けば、SOHOやランカイフォンといった一大飲食店街があります。世界中の食べものが食べられます。

 基本はお家でご飯の我が家で、二人してご飯を外にというと、新鮮なお魚を料ってくれるお店に足が向かいます。お刺身用の魚のさくも買い求めることが出来ますが、その日に日本から空輸されたお魚を目の前でさばいてくれるお刺身は、格別です。

 主人が贔屓にしているお店は、わざわざ海の向こう、九龍サイドまで出向きます。チムサッチョイの繁華街にその店はあります。カウンターに座れば、心得たもので主人の好きな飲み物が黙っていても出されます。カウンターの周りに集まって来るお客さんはみんな顔なじみ。そのカウンターの中で包丁を握っているのが、この店の主です。まだ、今のように日本料理屋が多くなかった頃から、香港で板前をして今のお店を持ったと聞いています。夕方少し早めにいくと、空港から届けられた魚が私たちの横を通って奥へ運ばれます。ここの魚は、私たち夫婦の出身地、福岡から運ばれてきます。

 お刺身以外にもお料理があるのですが、ここに私が行くときは概ね刺身のみ。その時その時の旬の魚のお刺身を作ってもらいます。いろいろなお魚を少しずつ盛り合わせるのではなく、そのアジ一匹をたたきにとか、そんさんまを一匹を刺し身にとか、石鯛を一匹お煮付けにとか、注文の仕方も我が家流。ちょっと多いかなと頭を傾げれば、カウンターの中から半分でもいいよ、とご主人の声がかかります。

 このカウンターの中のご主人、私たちよりほんの少し年下、旭川の出身で横浜で修行して香港にやって来たのだそうです。長い付き合いですから、家族関係まで知っています。そして、このご主人、主人にも私にもいろいろ嫌みまでおっしゃいます。さんまをパクパク刺身で食べている私に、よくそんなに食べれるね、なんて言います。脂の乗ったさんまは気持ちが悪くなるのだそうで、普通は2、3切れだそうです。食事が終わりになる頃には、奥の調理場に声をかけます。すると、その日の白身の魚のあらがお味噌汁に仕立てられて私たちの前に。このおいしさって、なにものにも替えがたいと思う程、美味しい。もしかした、お刺身よりもおいしいかもしれません。細かい骨の周りの身をちゅっと吸ったりします。お勘定の合間には、熱い熱いほうじ茶と日本の果物が出てきます。マスクメロンがデザートのときは、私には別のものが出てきます。マスクメロンが苦手なことも充分ご存知です。

 このお店、サーズのときも、リーマンショックのときも乗り越えてきたのに、3年程前、ご主人がほかの方に店を売って日本に帰られました。お店自体は、そのまんま新しいご主人が切り盛りしています。新しいご主人は、前のご主人より人柄はいい方です。でも、料理と人柄は一致しません。我が家の料理の頼み方も変わりました。ちまちまと盛られた盛り合わせのお刺身です。私はどうも、その手のちまちまでは満足しません。お魚のあらのお味噌汁なんて出てきません。

 前のご主人にはよく魚のさばき方、包丁の研ぎ方を習いました。刺身は刃の当たった切り口が命です。前のご主人が、作ってくれた刺身が懐かしい。熱いお魚のあらのお味噌汁が懐かしい。

 その実、お刺身でもあらのお味噌汁でもなく、私たちが懐かしんでいるのは、口の悪いカウンターの中のご主人です。何故かしら、このクリスマスのイルミネーションが灯り出す頃になると、あの昔のご主人を思い出します。

コメント
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