晴れ、11度、75%
おせち料理の中で初めて作ったのは、黒豆。朝日新聞の料理欄に出ていた土井勝さんの方法で炊きました。錆びた古釘なんか入れて炊きました。36年前の話です。数年はこの土井勝さんの炊き方でしたが、もっと簡単な炊き方を知りました。江戸時代から続く東京の仕出し屋「八百善」の炊き方です。浸透圧を利用して炊きますから、火にかけるのは実際豆を柔らかくする間だけです。私のような無精者にはうってつけの炊き方です。以来、ずっと「八百善」式。
豆がよければ70%は美味しく炊けると信じて疑わない私です。10年程前までは、義母が年末になると丹波の飛び切りの新物を1キロもしくは2キロ送ってくれました。全部家で食べるわけではありません。その年年にお世話になった方に届けます。ここ数年は、主人か私、どちらかが12月には帰国します。その折、黒豆を携えて香港に戻ってきます。一度、主人が時間がなくて北海道産の黒豆を買って来ました。しかも、新豆ではありませんでした。いやはや、この私、途中で一度投げ出したくなる程、柔らかくなるまで時間がかかりました。しかも、お重につめると小粒の北海道の黒豆は貧相に見えます。以来、絶対、丹波の飛び切りの新物、と心で思いました。
3年程前のことです。何かの本で、黒豆は新物よりは古物がいいと書いてありました。同じ頃、料亭では古豆を使って炊く話も聞きます。豆屋に古豆の注文が来るそうです。新豆より乾燥した古豆は、より水を吸って大きくなるというのです。
先日、いつもの福岡の豆屋に出向きました。もちろん、黒豆を買うためです。行くと、丹波黒豆飛切り、と書かれた樽の中は底をつきかけています。横に、古豆です、と書かれています。聞くと、新豆は2日後に入って来るとのこと、2日後には私はもう香港です。まあ、仕方ない今年は古豆を炊くとしようと買い求めました。
繁華街のデパートに入っている富澤商店に行くと、新物の黒豆が入っています。ふむふむ、今年は新豆と古豆を炊き比べようと考えました。
右が新豆、左が古豆です。古豆の方が乾燥が進んで小粒です。これが勢い水を含み新豆より大きく炊きあがるといいます。さて、初めに、古豆の方から炊いてみます。この結果は年を越してまたお話しします。
私が炊いた黒豆のことを思い出してくださる方が年賀状に懐かしいと書き送ってくださいます。ですから、炊き始める前は、いつもお鍋とお豆に手を合わせます。