晴れ、15度、68%
香港で、京人参や赤かぶが買えるようになったのは、つい最近のことです。しかも、お正月前だけ。入って来る数が少ない物ですから、これをゲットするためには、日系のスパーに足繁く通わなくてはなりません。今年もクリスマス明け、店の冷蔵棚に並んだところをおせち用に買い求めました。京人参、赤かぶを自宅のテーブルの上に出したときの私の顔は一仕事終わりと、勝ち誇っていたと思います。
京人参の紅さは、普通の人参とは随分違います。ぽってりとした赤。オレンジ色のキャロットではありません。吸い物椀に梅型にくり抜いた京人参は、お祝いの色にふさわしく彩りを添えてくれます。 赤かぶはもちろんおなますです。紅白揃えなくても赤かぶの赤さが、甘酢に漬けている内にかぶ全体をほんのりとピンクに染めてくれます。私のおせちには欠かすことが出来ない物たちです。
赤かぶは、きれいな葉っぱがついています。もちろん、葉っぱだって、炒めていただきます。京人参は葉っぱはついていないのですが。頭の上は切られずに、葉っぱの名残があります。京人参を料るのは、暮れの31日。それまで2、3日は冷蔵庫でお休みです。この京人参を使うようになって毎年繰り返しているのが、頭のところを切って水に漬けることです。ちょうど七草がゆの頃になると、つまり一週間で、見出し写真のようにきれいな緑の新芽を見せてくれます。今、3つ目の新芽が脇につきました。これはジャガイモではないので、土におろしても根付くことはありません。しかも、3月頃までこの新芽は数を増やし続けます。台所の脇の小窓の前でお日様を一杯に受けます。台所仕事の合間にこの新芽の緑は、心を和ませてくれます。そして、ほんとに急に、ある朝起きてみると新芽がお辞儀をして力なくなります。水遣りを忘れたわけではありません。人参の頭の紅いところは、カスカスになっています。この紅いところが、栄養を持ち続けるまで、新芽を見せてくれているようです。お辞儀をした新芽は、もう元気にはなりません。
毎年、お正月からの2ヶ月程、この京人参の新芽が台所の片隅にあります。生き物の生命力、新芽の緑の美しさ、こんな小さなものにいつも教えてもらいます。