夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『罪の余白』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の11本目@なんば)

2015年10月09日 | 映画(た行)
『罪の余白』
監督:大塚祐吉
出演:内野聖陽,吉本実憂,谷村美月,葵わかな,宇野愛海,
   吉田美佳子,堀部圭亮,利重剛,加藤雅也他

芦沢央による原作は先月読んだところ。
結構おもしろかったので期待して観に行きました。

大学で心理学の教鞭を執る安藤聡(内野聖陽)は、
妻と死別して以来ずっと娘の加奈(吉田美佳子)と二人暮らし。
ミッション系の女子高にかよう加奈は贔屓目を抜きにしても良い娘。
父娘で過ごす時間はあたたかく、笑いが絶えない。

少なくとも聡はそう思っていた。
なのにある日、加奈が校舎ベランダの手すりから転落して死亡する。
自殺と目されるが、聡には原因の心当たりがまったくない。
愛娘の突然の死を受け止めることができず、大学の授業中も虚ろ。
辞表を提出すると、聡の気持ちを慮った学長(利重剛)から休職扱いを提案される。
が、聡は休職中に何をするでもなく、ただただ酒浸りの日々を送る。

そんな折り、加奈の同級生だったという美しい生徒が訪ねてくる。
加奈が日記を書いていたのではという言葉に聡は首を振るが、
ふと思い立って加奈が使用していたPCを立ち上げる。
それまでにも何度も試みて失敗していたパスワードの入力にこの日は成功。
そして現れた画面には、加奈のつらい日々の様子が書き綴られていた。

別の同級生の名前を騙って訪ねてきたその生徒は木場咲(吉本実憂)。
彼女こそが加奈を死に追い込んだ張本人で、
スクールカーストの頂点に君臨する全生徒あこがれの的。
加奈への仕打ちがバレるのを恐れて様子を探りにきたのだった。
名前を騙られた笹川七緒(葵わかな)と聡が知り合って、咲の嘘が発覚。

加奈の父親が学校までやってきたと知り、
咲にしもべのように仕える新海真帆(宇野愛海)はパニックに陥るが、咲は動じない。
それどころか聡の怒りを買うように挑発的な態度を取りはじめ……。

原作とは人物像に変更が加えられていて、それゆえ印象が異なります。
聡はもう少し冷静で、咲の挑発に簡単には乗りません。
聡の年下の上司に当たる小沢早苗(谷村美月)は、
原作では才媛美人ながらアスペルガー症候群を疑われ、変人と揶揄される女性。
映画版ではまるで異なる女性として描かれています。
それが親近感を持たせたりもするのですけれど。

とにかくこの咲が嫌なヤツで、原作同様イライラさせられます。
冒頭の転落して血だらけの加奈が映し出されたシーンを見て、
役者は一流なのにB級の趣だなぁと不安になり、
終盤の咲と真帆のキスシーンには唖然。要らんし、こんなん。
『進撃の巨人』実写版前後編といい、どうして中途半端に性的シーンを入れたがるのか。
こんなの観客へのサービスでも何でもない、作品自体を貶めるだけに思えます。
どうせやるなら徹底的にやってもらえませんかね(笑)。

というわけで、期待していたわりにはいろいろと中途半端な印象。
原作のほうがずっと面白かったですが、
咲からケチョンケチョンに言われて凹む早苗役の谷村美月は可愛かった。
原作と大きくちがうのに良かったという点は、彼女の役でした。
それ以外は残念な感が強いけれど、睡魔に襲われることは無し。←最近の基準はそれかよ。(^^;

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『シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった2人』

2015年10月07日 | 映画(さ行)
『シャーリー&ヒンダ ウォール街を出禁になった2人』(原題:Two Raging Grannies)
監督:ホーヴァルド・ブスネス

NHK BS1で2014年に放送された、ノルウェー出身監督による
『はつらつおばあちゃんが行く!孫たちにより良き世界を』を劇場公開。
TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスポート保有期間中ではありますが、
たまにはそれ以外の劇場で映画を。テアトル梅田にて。

シアトルに暮らすシャーリー・モリソン、92歳。
その親友のヒンダ・キプニス、86歳。

シャーリーは、8歳の可愛い孫娘と新聞を読んでいる途中、
孫娘の質問に答えられない言葉や事象があることに気づきます。
不況って何? 経済成長って何?

ヒンダに会って質問をぶつけるも、ヒンダだってわからない。
どうしても知りたくなり、Googleで検索。
孫娘にはYouTubeを教えてもらい、ケネディの演説を拝聴。
シャーリーはワシントン大学へ電話をかけると、経済学の授業の聴講を希望します。

車椅子でつるんでやってきたおばあちゃんふたりに、
教授は「何の授業かわかってそこにいるのか」とあきらかにバカにした表情。
授業の途中、シャーリーが挙手するも教授は無視。
しつこく質問しようとすると、質疑応答の時間は設けない、
黙っていられないなら出て行けと教授がおっしゃる。

追い出されたふたりは、やっぱりあきらめきれず、
多くの学者や金融関係者に「経済成長って必要なの?」と問い続けます。

アメリカが現在の生活を維持するだけで、地球が4個か5個必要。
かつ、発展途上国はこぞって生活レベルを上げようとするのですから、
地球が何個あっても足りないでしょう。
途上国は成長しようとするのが当然だとしても、
そうでない国に経済成長は必要なのでしょうか。

「ウォール街を出禁になった2人」とのタイトルに、
株や投資で儲けるために勉強を始めたおばあちゃんたちのことかと思いきや、
彼女たちは儲け話になんてまったく興味がありません。
ただ純粋に、経済成長について知りたがっているのです。

笑われても疎まれてもめげないふたりが頼もしい。
手術のために入院したヒンダと会えない間、
家族に囲まれて穏やかに過ごしているはずのシャーリーが見せる寂しげな顔が印象的。
退院したヒンダと出かけるシャーリーは俄然元気になっていました。

心にも成長を。

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『チャンス商会 初恋を探して』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の10本目@梅田)

2015年10月06日 | 映画(た行)
『チャンス商会 初恋を探して』(原題:Salut d'Amour)
監督:カン・ジェギュ
出演:パク・クニョン,ユン・ヨジョン,チョ・ジヌン,ハン・ジミン,
   ファン・ウスレ,ムン・カヨン,チャンヨル他

ストーリーも何も知らず、まだ観ていない作品を探していたら
これがちょうど公開されたばかりだったというだけ。
タイトルから軽いラブコメを予想して行ったら、泣けて泣けて。

ここからすでにネタバレになりますので、ご覧になる方は読まないでください。

『やさしい嘘と贈り物』(2008)のリメイクだと気づいたのは、
上映時間の半分をとっくに過ぎ、残り30分ちょいになったころ。
基本的にオリジナルに忠実であると言っていいのに、
舞台がアメリカから韓国に移っただけでこうも気づかないとは。
オリジナルでも当然泣いたはずなのですが、こっちのほうがさらに良かったかも。

スーパーマーケット“チャンスマート”で働くソンチルは、
気むずかしくて怒ってばかりの天涯孤独な老人。
同町は再開発地区に名乗りを上げて活性化を図ろうとしているが、
住民のなかで唯一ソンチルだけが押印を拒否し、
そのせいで隣町にオイシイ話を持っていかれそう。
チャンスマートの社長チャンスがあの手この手を使って納得させようとするが、
ソンチルは絶対にハンコを押そうとしない。

ある日、向かいの家に引っ越してきた一家。
子連れの出戻りとおぼしき女性ミンジョンとその母親グンニム。
近所で花屋を開店したらしい。

ここのところ、自分の留守中に人の出入りがあるようだと感じていたソンチルは、
グンニムがソンチル宅から出てくるのを目撃して激怒。
しかしグンニムは、独り暮らしのソンチルさんが気になっただけ、
そんな失礼な物言いはないでしょう、お詫びに食事をごちそうしてくださいと言う。

女性と二人で食事なんてどうすればいいのかわからない。
恥を忍んでチャンスに相談すると、デートのコツをあれこれ伝授してくれる。
グンニムに会ってみれば思いのほか楽しく、ときめいている自分に気づく。
次第に彼女に惹かれていくが、なかなか素直になれないソンチル。
見かねたチャンスをはじめ、近隣の人びとがこっそり彼の恋をサポートするのだが……。

偏屈じいさんとお節介ばあさんの恋の話。
ところどころにばあさんが「なんとかハンコをつかせるから」との台詞があり、
もしやばあさんは再開発を目論む奴らの回し者なのかと思ったりもして。
やがてそれを知ったじいさんが傷ついて。というのがありがちな線。
何かありそうだと思いつつ観ていた1時間余り。
そしてやっと気づきました、『やさしい嘘と贈り物』のリメイクだと。

ここから全部ネタバレです。

ソンチルとグンニムは実は夫婦。
ソンチルにアルツハイマーの症状が出はじめたころ、
グンニムが末期の膵臓癌に冒されていることが判明。
ショックで自殺を図ったソンチルは、意識を取り戻したときには何もかも忘れていました。
家族のことを忘れて、新しい自分を作りあげたソンチルは、
自分は退役軍人で、生涯独身を貫いてきたと信じ込んでいます。
チャンスマートを築き上げたのはソンチルで、
ソンチルが社長と呼んでいるチャンスは本当は自分の息子なのに。

リメイクだとわかった瞬間、
町のみんなでソンチルを見守っていたということもわかり、涙が止まらず。
お調子者にしか見えなかったチャンスがどれだけ父のことを思っていたか。

記憶から消してしまいたくても消せない想い出に苦しめられることもあるのに、
どうしてずっと覚えていたいことを忘れてしまうのでしょう。

ここまで書いておいてナンですけど、予備知識なしにご覧になることをお勧めします。

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『劇場版 弱虫ペダル』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の9本目@梅田)

2015年10月05日 | 映画(や行)
『劇場版 弱虫ペダル』
総監督:鍋島修
監督:長沼範裕
声の出演:山下大輝,鳥海浩輔,福島潤,安元洋貴,森久保祥太郎,
     伊藤健太郎,代永翼,前野智昭,吉野裕行,柿原徹也他

フリーパスを作ったのはいいけれど、
上映中の作品にはフリーパス作成以前にお金を払って鑑賞済みのものが多く、
しばらくは「フリーパスがなければスルーしていたはず」の作品が主。
本作もそうです。

原作は渡辺航のコミックで、現在も『週刊少年チャンピオン』に連載中。
舞台化、TVアニメ化、そして今回の劇場版映画化と大人気の模様。
もちろん私は原作未読、TV版も一度も観たことがありません。
わかっていたのは自転車競技が題材だということのみ。
しかし、気弱そうな少年が人気アニメのDVDを買いに行くシーンからのスタートに、
えっ、これってチャリの話じゃなくてオタクの話なのかと面食らいました。
オタクなチャリ乗り少年だったのですね。(^^;

アニメ好きのオタク・小野田坂道は、総北高校の自転車競技部に入部。
1年生ながらインターハイのメンバーに抜擢され、大活躍。
チームの総合優勝に大きく貢献する。と、ここまでが周知の話のようです。

一躍有名人になった坂道だが、本人にはそんな意識がまるでない。
大好きなアニメ『ラブ☆ヒメ』のDVD発売初日、
無事にブツを手にすることができてウキウキわくわく。

幸せな気持ちのまま登校すると、インターハイでの坂道の活躍を称える幕に愕然。
照れくさくて大慌ての坂道を、生徒らは不思議がったり面白がったり。
そんな坂道に同学年のチームメイト・今泉俊輔と鳴子章吉が声をかける。

部室に行ってみれば、あと半年余りで卒業してゆく主将・金城真護から重大発表が。
熊本でおこなわれる“やまなみレース”に参加することにしたと言う。
また、例年このレースへの参加を見合わせていた強豪校・箱根学園も、
総北が参加すると聞いて参戦を決める。

インターハイのメンバーと同じ、総力を挙げての参加に皆の志気が高まるなか、
坂道が慕う3年生・巻島裕介の様子がおかしい。
鈍感な坂道はまったく気づいていないが、巻島は9月から海外留学の予定。
そのため、インターハイに参加することを断念し、すでに退部届を提出していた。
巻島がいなくても闘うしかない。金城らはそう心に誓うのだが……。

さまざまなTVドラマの劇場版同様、これが初見なので人物像も人間関係もわからず。
だけど、いいなぁと思ったのは、腹黒い奴がいないということ。
チームメイトも他校のライバルたちも、本当にいい奴ばかり。
憎まれ口は叩いても、スポーツマンシップとはこうあってほしいと願うとおり、
誰もがフェアに闘い、負けたときにも相手への祝福を惜しみません。
健闘を称え合う姿を見るのはいいものです。

自転車の話で思い出す本は近藤史恵の『サクリファイス』。
これはドロドロもある面白いサスペンスでしたけれど、
本作のように綺麗な心の映画を見せられたら、自転車競技自体への興味が湧きます。
超お気に入りの『ベルヴィル・ランデブー』(2002)も自転車の話。
好きすぎて、それを観たときの気持ちには到底およびませんが、
人気漫画の世界を観る機会が持てたのはとてもよかったです。

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『ヒロイン失格』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の8本目@伊丹)

2015年10月04日 | 映画(は行)
『ヒロイン失格』
監督:英勉
出演:桐谷美玲,山崎賢人,坂口健太郎,福田彩乃,我妻三輪子,
   高橋メアリージュン,濱田マリ,竹内力他

中学高校時代に『別冊マーガレット』の愛読者ではありましたが、
これはまだたった5年前、2010年から2013年にかけて別マに連載された作品だそうで。
さすがにそんな新しい作品は知りません。
これもフリーパスがなければスルーしていたかも。
スルーしていても惜しくはなかったけれど、まぁそれなり。

高校生の松崎はとり(桐谷美玲)の意中の人は幼なじみの寺坂利太(山崎賢人)。
自分こそヒロインで、利太とは運命で結ばれているはず。
しかし、告白を先延ばしにしていた矢先、利太が別の女子とつきあいはじめてしまう。
よりによってその相手は、六角精児似のメガネ女子・安達未帆(我妻三輪子)。
どうしてあの子なのと問うはとりに、利太は「コクられたし、いい人そうだし」と答える。

親友の中島杏子(福田彩乃)から呆れられるも、もうなりふりかまっていられない。
利太奪還を目指して作戦を練るはとりだったが、未帆から王道のヒロインぶりを見せつけられる。
意気消沈するはとりの前に現れたのは、超イケメンのモテ男・弘光廣祐(坂口健太郎)。
廣祐からまさかの告白を受け、動揺するはとりは……。

上映前、お手洗いで遭遇した小学生女子3人連れ。
「めっちゃ楽しみやってん、『ヒロイン失格』観るのん」。
へぇぇぇぇ、そんなに人気があるのかぁ。
さらには、「どっちとくっつくんかなぁ」。
そら利太でしょう。なんぼ廣祐がいいオトコやからって、廣祐とくっついてはラブコメの王道とは言えん。
などと思いつつ鑑賞。原作が人気なのか出演者が人気なのか私には不明ですが、客席はとにかく女子でいっぱい。

桐谷美玲ちゃん、可愛い。何そのツヤツヤくちびると細くて長い手足。
山崎賢人くんも坂口健太郎くんもどこで見たのか記憶なし、でも出演作は観たことありました。
どちらも甲乙つけがたいカッコよさというのか可愛らしさ。

だけど。
劇場内の湧きっぷりにはついて行けず。
そうか、高齢層だけが共感能力が高いと思っていたけれど、
高校生だって高校生が主人公の作品を観れば胸がキュンキュンするんや、
いまキュンキュンしてへんのって私だけかと愕然としました。

みんなと同じようにキュンキュンはできませんでしたが、
普通のラブコメとはちがって、演出がかなり楽しい。
美玲ちゃんが中尾彬の声になったり、柳沢慎吾の顔になったり、
ホンモノの六角精児が出てきたり。

思った以上には楽しかったです。
観ただけで若返ったような気がしましたけれど、気のせいですよね。(^^;

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