雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

清少納言の夢

2017-02-25 08:46:10 | 麗しの枕草子物語
          麗しの枕草子物語

               清少納言の夢

私の夢でございますか?
願い事は沢山ございますが、さて、夢といわれますとねぇ・・・。まあ、こんなことは考えてみたりしますわねぇ。

宮仕えしている女房たちが、宿下がりした時などに落ち合って、それぞれの御主人のことを、自慢し合ったり、宮家方や大臣家方の様子などを、互いに話し合えるような場所を提供して、私はといえば、その家の女主人として、にこにこしながら聞いているなんてのは、いいと思いますねぇ。

望めることなら、屋敷が広くて、瀟洒な造りで、私の親族はもちろんのこと、親しく付き合っている人も、そう、特に宮仕えする女房を、あちらこちらの部屋に住まわせるのも、やってみたいことですわ。
そして、何かの折には、家中の人が一か所に集まって、物語を聞かせたり、誰かが詠んだ和歌などの感想を述べ合ったり、ちょっとすてきな御方からの手紙なんかも持ち寄ったりして、互いに見せ合ったり、返事を書いたりするのも楽しいでしょうね。
また、女房の誰かと親しい男性が訪ねて来たりすれば、きれいに整えた部屋に迎え入れ、雨など降って帰れない時でも、気持ちよくもてなし、女房が帰参するような時には、十分な準備をしてやって、満足いくようにして出掛けさせてやりたいのです。

まあ、高貴な方々の噂を知りたがったり、若い女房の世話を焼きたがったりするのは、行き過ぎた好奇心かもしれませんが、私の夢といえば、こんなところでございますでしょうか。


(第二百八十四段・宮仕えする人々の、より)
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