雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

高木美帆選手8連覇

2023-10-20 18:33:31 | 日々これ好日

     『 高木美帆選手8連覇 』

   スピードスケートの 全日本距離別選手権が開幕した
   女子1500mでは 高木美帆選手が
   圧巻の滑りで この種目の8連覇を果たした
   他にも 若い選手の台頭もあり
   この後も 見所いっぱいだ

                   ☆☆☆

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浄土に迎えられたはずの聖人 ・ 今昔物語 ( 20 - 12 )

2023-10-20 08:17:01 | 今昔物語拾い読み ・ その5

   『 浄土に迎えられたはずの聖人 ・ 今昔物語 ( 20 - 12 ) 』


今は昔、
美濃国に伊吹山という山がある。
その山で長年修行している聖人がいた。浅学無知で法文を学ばず、ただ弥陀の念仏を唱える以外の事は何も知らない。名は三修禅師(829 - 900 ・権律師になっているので、浅学無知が正しいかどうか疑問。)といった。余念なくただ念仏を唱えて、長年が過ぎた。

ある時、夜深くに念仏を唱えながら仏前に座っていると、空から声がして、聖人に告げた。「汝は熱心に我を頼みとしている。念仏の数も多く積もったので、明日の未時(ヒツジノトキ・午後二時頃)に我がやって来て汝を迎えよう。努々(ユメユメ・決して)念仏を怠ることなかれ」と。
聖人はこの声を聞いて後、いよいよ心を込めて念仏を唱えて怠ることがなかった。

そして、明くる日になったので、聖人は沐浴し身を清浄にして、香をたき花を散らして、弟子たちに告げて、一緒に念仏を唱えながら、西に向かって座っていた。
やがて、未時が過ぎようとする頃、西の山の峰の松の木の間から、しだいに光り輝くものが見えた。聖人はこれを見て、ますます熱心に念仏を唱え、手を合わせて礼拝し、見れば、仏(阿弥陀仏)の緑の御頭が差し出されてきた。金色の光に包まれている。御髪の生え際は金色に磨かれたようであり、眉間の白毫(ビャクゴウ)は秋の月が空に輝くように、御額(ヒタイ)に白い光りがきらめいている。二つの眉は三日月の如くして、二つの青蓮花のような御眼は遠くを見やり、静かに月が昇って来るかのようである。
また、様々の菩薩は、妙なる音楽を奏で、その尊さはたとえようもない。
また、空からは様々な花が雨のように降ってくる。
仏は眉間の光りを放たれて、聖人の顔をお照らしになる。
聖人はまったく他念なく、ひたすら拝み入り、念珠の緒も切れんばかりであった。

やがて、紫の雲が厚くたなびき、聖人の庵の上を覆った。同時に、観音は紫金の蓮花台を捧げ持って聖人の前にお寄りになる。聖人は這い寄ってその蓮花台に乗る。仏は、聖人を迎え取って、遙かなる西に向かってお還りになった。
弟子たちはこれを見て、念仏を唱えながら尊ぶことこの上なかった。
その後、弟子たちはその日の夕べより、その僧房において念仏の法事を始めて、熱心に聖人の後世を弔った。

その後、七、八日を経て、その僧房の下仕えの僧たちが、念仏供養をしている僧たちに沐浴させるために、薪を取るために奥の山に入ったが、谷あい遙かに覆っている高い杉の木があった。
その木の梢で必死に叫んでいる者の声がする。よく見てみると、法師が裸で縛られて、木の梢に結びつけられている。これを見て、木登り上手の法師がすぐに登ったみると、極楽に迎えられた我が師僧が、切り取った蔦で縛り付けられていたのである。
木に登った法師はこれを見て、「お師僧様はどうしてこんな目にお遭いなのですか」と言って、泣く泣く近寄って解こうとすると、聖人は、「御仏が『すぐに迎えに来てやる。しばらくこのままにしておれ』と申されたのだ。どうして、解いて下ろそうとするのか」と言ったが、かまわず近寄って解くと、「阿弥陀仏さまァ、私を殺そうとする人がありますゥ、おう、おう」と大声を挙げて叫んだ。
それにかかわらず、法師たちは何人も登って、蔦を解いて木から下ろし、僧房に連れ帰ると、僧房にいた弟子たちは、皆情けなくなって泣き合った。
聖人は、すっかり正気をなくし、錯乱したまま二、三日経って死んでしまった。強い信仰心を持った尊い聖人といえども、知恵(物事の道理を判断する力。信仰心だけでは十分ではない、ということらしい。)がなければ、このように天狗にたぶらかされるのである。弟子たちも又、何も気付かず、ふがいないことだ。

このような魔縁(マエン・悪魔などで、天狗もその仲間としている。)と三宝(ここでは、仏の世界といった意味。)とは、まったく似てもいないが、知恵がないためにそれに気付かず、このようにたぶらかされたのである、
となむ語り伝へたるとや。

     ☆   ☆   ☆

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