『 言霊の助くる国ぞ 』
磯城島の 大和の国は 言霊の
助くる国ぞ ま幸くありこそ
作者 柿本人麻呂歌集
( 巻13-3254 )
しきしまの やまとのくには ことだまの
たすくるくにぞ まさきくありこそ
意訳 「 しきしまの 大和の国は 言霊が助け給う国です どうぞ ご無事でありますように 」
* この和歌の作者は、「柿本人麻呂歌集」となっています。つまり、万葉集の成立以前に、柿本人麻呂が編集したらしい歌集があり、そこから採録したということです。
万葉集には、この歌集から約370首も採録されています。それらの作品いずれもが作者名が分っておりませんが、人麻呂自身の作品が多くを占めていると推定されます。
本歌も、その雄大さからして、柿本人麻呂の作品と考えています。
* この歌は、この前にある長歌に対する「反歌」として載せられています。
( 巻13-3253 )
葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国 然れども
言挙げぞ我がする 言幸く ま幸くませと つつみなく
幸くいませば 荒磯波 ありても見むと 百重波 千重波にしき
言挙げす我は 言挙げす我は
あしはらの みづほのくには かみながら ことあげせぬくに しかれども
ことあげぞあがする ことさきく まさきくませと つつみなく
さきくいませば ありそなみ ありてもみむと ももへなみ ちへなみにしき
ことあげすあれは ことあげすあれは
意訳 「 葦原の 瑞穂の国は 神意のままに 言挙げしない国です それでも 言挙げを私はします お元気で いらっしゃいますようにと つつがなく お元気でいらっしゃれば 荒磯波があっても またお会いできると 百重波 千重波のように 繰り返して 言挙げします私は 言挙げします私は 」
なお、「言挙げ」とは、「言葉に出して言い立てること」です。
* 長歌から、この歌が旅立つ人への無事を祈る歌であることが分ります。それも、海を越えていく旅のようですから、再び会えることが出来るかどうか保証されない、厳しい旅立ちだと想像されます。
その時に作者は、言葉の持つ霊力を信じて、懸命に歌い上げます、「友よ、無事で過ごしてくれ」と。
万葉の大歌人の絶唱の姿といえましょう。
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