雅工房 作品集

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えせ者のところ得るをり

2014-09-17 11:00:34 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百四十九段  えせ者のところ得るをり

えせ者のところ得るをり。
正月の大根(オオネ)。
行幸のをりの姫大夫(ヒメマウチギミ)。
御即位のみかど司。
六月・十二月の晦の、節折(ヨヲリ)の蔵人。
     (以下割愛)


つまらない者が幅を利かせる時。
正月の大根。(元旦の歯固めに用いられた。歯固めは、大根・瓜・獣肉などを食べて長寿を願う行事)
行幸の折の姫大夫。(姫大夫は、行幸の折、馬に乗って供奉する内侍司に属する女官。普段は目立たない存在)
御即位のみかど司。(即位式で御座に絹蓋を挿しかける役のみかど司の女官。やはり普段は目立たない)
六月と十二月の月末の、節折の蔵人。(六月・十二月の大祓の夜に、女蔵人が竹を使って天皇の身長を計った。寸法通りに竹の節を折ることから節折といわれた)

春秋の御読経(百僧を請じて大般若経を宮中で読ませた大法会)の威儀師(イギシ・法会の折の先導の僧)。赤い袈裟を着て、僧の名を次々と読み上げているのは、とても清らかで立派です。
春秋の御読経・御仏名などで、場内の設備をする蔵人所の衆(人たち)。(蔵人所の衆は六位なので、本来昇殿出来ないが、この準備の時だけは紫宸殿や清涼殿に昇ることが許された)
春日祭の近衛舎人ども。(祭りの前日に近衛中将が勅使に立つが、舎人が供に着く。途中で舎人を左右大臣などに任ずるような、ふざけた除目を行う習わしがあったらしい)
元三の薬子(グアンサンのクスリコ)。(正月三が日、天皇が召し上がる屠蘇酒の毒見をする童女のこと)
卯杖の捧持。(正月上の卯の日に、宮中では大舎人寮・兵衛府などから天皇・中宮・東宮などに卯杖を献じた。この時舎人などが捧持したが、その得意そうな様子を指している。なお、「捧持」を「法師」とする説もあるが、この時天皇の御前などに法師は登場しない。第七十五段にも登場している)
御前の試みの夜の理髪(ミクシアゲ)。(五節の第二日清涼殿孫庇で行われる御前の試みには、理髪の女官も舞姫に同道する)
節会の御まかないの采女。(節会で天皇などの配膳にあたる采女は、晴れがましい役である)



「えせ者]といえば、偽物、似ているが本物ではない、といった意味に使いますが、当時は少し違うようです。本段も、分相応な役を得て鼻高々なものをあげています。
おそらく、少納言さまお得意の分野だと思われ、数多く示されていますが、いずれもかなり難しいものばかりでした。

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