雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

むつかしげなるもの

2014-09-18 11:00:54 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百四十八段  むつかしげなるもの

むつかしげなるもの。
縫物の裏。
鼠の子の、毛もまだ生ひぬを、巣の中よりまろばし出でたる。
裏まだつけぬ皮ぎぬの縫ひ目。
猫の耳の中。

殊に清げならぬところの、暗き。
ことなることなき人の、子などあまた、持てあつかひたる。
いと深うしも心ざしなき妻の、心ち悪しうして、久しう悩みたるも、夫の心ちはむつかしかるべし。


むさくるしい感じのもの。
刺繍の裏。
鼠の子の毛もまだ生えていないのが、巣の中から転がり出てきたもの。
裏がまだついていない皮衣の縫い目。(中国北方風俗の輸入らしい。皮革の縫製は縫い代が多くむさくるしく感じたらしい)
猫の耳の中。

それほど掃除か行き届いていない所の、暗いの。
たいした身分でもない人が、子供を沢山つくって、もてあましているの。
それほど深い愛情を持っていない妻が、加減が悪くなって、長い間患っているのも、夫の気持ちとしては、きっとうっとうしいことでしょう。



「むつかしげなるもの」を、むさくるしい感じのもの、としましたが、前半部分と後半部分ではかなり対象が違っています。「むつかしげなるもの」には、見た目のものと、心に感じるものがあるということなのでしょうね。

それにしても少納言さま、最後の部分は、冷静といいますか、厳しいといいますか・・・

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