マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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北野奥小派籠もりのフリアゲ

2010年10月15日 07時47分13秒 | 山添村へ
北野天神社に奉納される田楽舞の豊田楽。

それには渡り衆の七人が舞う。

そのうちの四人は奥小派(おくこば)の地区から選び出される。

選ぶ籤引きは竹筒に入れられたコヨリである。

奥小派は38軒。祭りの当屋は籤から外される。

毎年選び出される渡り衆は予備人を入れて5人だ。

年当番の年預(ねんにょ)が籤を引くのだが、それを現認するのは副総代の二人。

村の一団も加わる。

籤引きが厳正に行われるかどうかを確認する立会人たちだ。

午前中に虫の祈祷や風祈祷など帝釈寺の行事を終えた総代たちは天神社の参籠所に集まった。

机や座布団を準備した席についた村人たち。

「本日の籠もりは地区の祭り、ならびに平穏無事や五穀豊穣を願う日だ。なおかつ、祭りの中心的な役割を担う渡り衆を決める大事な日でもある」と挨拶された総代。

竹筒に10本(病い人の3人を除く残された人数)のコヨリを入れた。

当たり籤のコヨリは赤い印が付けられている。



これが渡り衆の当たり籤である。

名前を詠み上げ籤を引き上げる。

赤い色がでれば氏名を記す副総代。次々と渡り衆が決まっていった。

およそ10分もかからなかった籤引きはこうして厳粛に終えた。

昨年までは竹筒ではなくて封筒だった。

これでは格好がつかんと、以前の形に戻したという。

籤引きの正式な名称は「フリアゲ」だという。

籤を引くのが振り上げとは・・・。

およそ50年前は竹筒に穴を開けた半紙を広げていた。

中には氏名を記した紙片。丸めていたそうだ。

それを手に持って上方に振った。

だから「フリアゲ」なのだという。

形式は替わっても厳かな籤引きには変わりないと総代や長老はいう。

こうして毎年に5人の渡り衆が選ばれる。

予備に当たった人は出番がなければ次年に回される。

あと2回できる計算だ。

一巡すれば再び最初に戻る38軒。

「俺は5回も渡り衆をこなしたことがある」とYさんは黒光りの笑顔で話した。

今年の秋祭りは渡り衆が着る素襖(そう)や太鼓などを総替えで新調したという。

体育の日、村の人たちは彼らを迎えることになるだろうといいつつ座敷は直会の場に転じていく。



奥のごちそうは鶏のすき焼き。

机には食材が並べられていく。

酒やビールもでてきた。

配膳に忙しく動き回るのは年預だ。

皆も席について長老が乾杯の音頭をとった。

こうして奥小派(こば)の籠もりは始まった。

かつては各自が持参した布団に潜って寝た。

泊まり込みのお籠もりだったそうだ。

(H22. 9.11 EOS40D撮影)