Wind Socks

気軽に発信します。

ネルソン・デミル「ワイルドファイア」

2008-10-13 11:04:06 | 読書

             
 どうやらアメリカ人は、日本の真珠湾攻撃に次いでショックだったのが、アルカイーダの9.11テロ攻撃だったようだ。9.11はアメリカばかりか全世界にも大きなショックを与えた。
 そのショックが長い尾を引いている2002年10月、狂気の実業家ベイン・マドックスはとんでもない計画を実行に移そうとしていた。それはロサンジェルスとサンフランシスコでスーツケース型核爆弾を爆発させテロ攻撃に見せかけて、ワイルドファイアを作動させることだった。このワイルドファイアは、アメリカ政府の最高機密計画で、アメリカの都市が大量破壊兵器によって攻撃された場合に自動的に発動されるというもの。
 それを阻止するのは連邦統合テロリスト対策特別機動隊捜査官ジョン・コーリーとコーリーの妻でFBI捜査官ケイト・メイフィールドの二人。著者は恐怖の時代の恐怖の物語だといっているが、わたしにとってはひしひしと身に迫ってくるものはなかった。
 なにせ上下巻それぞれ約540ページのうち上巻は、狂気のベイン・マドックスが開く会議の中身を延々と綴っていく。これは退屈する。下巻にジョンとケイトの捜査が核心に迫るが、ジョンの饒舌ともいえる冗談の連発にややうんざりする。夫婦で事件を追うわけで、会話の流れに二人がじゃれあっている雰囲気では致し方ないか。結局リズム感のない文体に、恐怖というわりには緊迫感が欠如していた。着想は褒めていいけど。