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ロノ・ウェイウェイオール「鎮魂歌は歌わない」

2008-10-22 11:05:45 | 読書

          
 一人娘のリジ-がモーテルの一室で殺された。娘とは一年前から顔も見ていないし電話で話もしていなかった。犯人を絶対捕まえてやると心に誓うのは、わざわざ片道三時間のシアトルまで行ってヤクの売人の売上金を強奪してポートランドに戻ってくるという仕事で食い扶持を稼ぐワイリーという男だった。妻とは離婚していて、いうなれば典型的な無責任男だった。
 友人のレオンと同じく友人の刑事サムともども犯人探しを始める。自堕落で無責任男がどういうわけか普通のお父さんに目覚めたというところ。行く先々のいたるところで殴られたり殺されたりするコールガールや商売女に突き当たりながら真犯人の目星がつく。
 その男はよりによってDEA(麻薬取締局)の捜査官だった。終盤は読みどころで、この男にどう落とし前をつけるか。結構すきっとした決着だった。当然男は殺される。
 これぞハードボイルドといわれる新人作家のデビュー作。少し余情が足りないという気がしないでもない。著者についてあとがきによると、ハワイ人の血を半分、イタリア人の血を四分の一、オランダ系の血を四分の一ひいているそうで、名前も風変わりなのもそのせいらしい。
 サンフランシスコに生まれ、西海岸を転々としてオレゴン州ポートランドの高校を卒業するまでに十五の学校に通ったと本人が言う。現在はポートランドで社会科と英語の教師をしているとか。以前には新聞やタウン誌の編集をしたこともあり、プロのポーカー・プレイヤーの時期もあったそうな。
 なんとも名前のように風変わりな経歴の持ち主。それにしても、こういう人が高校の教師として採用されるアメリカの教育現場を考えると、なんと自由で弾力性に富んでいることかとある種うらやましさを感じる。大分県の不正採用なんかは、こせこせしていて唾棄したくなる。なお本作はアンソニー賞(世界最大のミステリー・コンベンションで、参加者の投票で選ばれる)の最優秀新人賞の候補にもなった。