ザハの設計案を基本に開発を進める決定がなされた。NHKや日経の社説でも「ずさん」な進め方、無責任体制が批判されている。見直しができないのは間に合わないからというのはあいた口がふさがらない。
2,520億円という開発費は先行事例の数倍という。また、一般の反対は81%との報道もある。しかも景観を損ねるようなアーチは800億円かかるそうだ。この資金の出所と責任者が不明なのがさらに理解できない。「事業主体のJSCが開催する有識者会議に、デザインの審査委員長を務めた安藤忠雄氏が欠席」というのも理解できない。
まずは予算があり、見積のうえ判断するのが公共予算の執行ではないのか。先に設計案を決めてから予算を検討する手順に大きな陥穽がある。さらに、都市計画的観点が欠如しており、施設スケール、景観の配慮が設計選定にない。
槇文彦が新国立競技場のザハのデザインを批判しているが、これは安藤忠雄との代理対決のように思える。槇は知性派のバランス重視で人に対し親密を感じるが、安藤は単純で、省略、造形的と対極にある。なお、当方は初期の安藤作品のTimesなどは評価するが、その後は「好きではない」としか言えない。実用的な環境としての建築ではなく、オブジェに近い。ルイ・カーンの再来と言われたが、ルイ・カーンが気の毒だ。
老建築家と自称する槇さんの御苦労を偲ぶ。建築家としての職能に誇りと義務を感じておられる。なお、論点は都市の景観に絞られ、巨大すぎる外観の修正を提案されている。
ザハのデザインというかスタイリングは不気味だ。デザインとして狙った回廊機能はもはや消え去ったのでは。天蓋のための橋というのは理解できない。
東京の公園として景観・都市計画から、公共事業の投資採算性から、納税者の意見から、今回の決定は疑問だ。
替えるべきものは替える、君子は豹変す