ENLIGHTMENT NOW: THE CASE FOR REASON, SCIENCE, HUMANISM, AND PROGRESS
名著「暴力の人類史」の作者、今回は悲観主義からの脱却を理性、科学、人文、進歩から啓蒙されるべきだという主張を実証している。ユーモアも多く楽しめるが、上下2巻と厚いのが難点。酷暑の間の読書などでないと読む気はしないかもしれない。知見は:
・科学者の4徳:CUDOS(communism, universalism, disinterestedness, and organized skepticism https://en.wikipedia.org/wiki/Mertonian_norms )
・啓蒙:知る勇気、対義としてポピュリズム、ロマン主義、衰退主義(ニーチェなど)
・呪術的世界観の打破→エントロピー、進化、情報
・ネガティビティ・バイアス:悪は善より強い( https://imidas.jp/genre/detail/F-133-0080.html )→報道も悲観的なバイアスがかかる
・不平等と経済成長:昔より不幸ではない、不平等と幸福感は疑似相関であり因果関係ではない
・環境の持続可能性は、直線的傾向を継続させる論理だが代替手法により解決されてきた
・犯罪は焦点を絞って抑止が有効、犯罪者は自己愛的で反社会的
・テロの目的は注目を集めること、実際は事故の死者数が圧倒的に多い
・人間開発指数:平均寿命、一人当たりGDP、教育水準→幸福度は歴史的に増加
・歴史とともに、定年は恐怖から楽しみに、有給休暇も豊かにする、余暇も拡大→忙しくない、旅行も増加、食の多様化、文化に触れる
・専門家の予測は外れる:「人口爆弾」のポール・エリック、ベイズ推定( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%A4%E3%82%BA%E6%8E%A8%E5%AE%9A#:~:text=%E3%83%99%E3%82%A4%E3%82%BA%E6%8E%A8%E5%AE%9A%EF%BC%88%E3%83%99%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%81%99%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84,%E6%8E%A8%E8%AB%96%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E6%8C%87%E3%81%99%E3%80%82 )も外れる。
・超予測者は「運命を拒否し、偶然を受け入れる」、「積極的柔軟性」、ファクト・チェック、バイアスを正すには科学的知識が不可欠
・イスラム諸国の停滞は宗教が原因
・ニーチェの超人は「ロマン主義的軍国主義」のもと→トランプへ継承:作者はよほど嫌っている
・理性の力→生きようとする衝動、「(悪いことを回避する)感覚を持つ存在」
世の中が悲観的で、メディアも追従しているのは理性的ではない。感情で支配され、ファシズムを感じる。その反対に、批判されるのを嫌う若者が増えたのは、傷つきやすい自己を守りながら、人を傷つけるのは構わないという「利己・自己愛」を感じる。その底には不満と不安がある。
メディア主導の脅しと、ぼんやりした恐れと不安、打開策として一部コミュニティにおけるファシズムの台頭の世情が良く分かる。利他の心が生まれるのには「啓蒙」の観点は必要と思う
著者は、理性で克服できると信じている。理性側の超人でもある(Harvard的だ)