オプション理論の内容も平易に書かれ入門書としてもお奨めできる。金融工学についても明解な見解で賛同できる。感心した内容は<o:p></o:p>
CDS(倒産ゲームの参加料)については「格付け会社」により価格が決まるが、その内容は「半分アートで半分サイエンス」だという。つまりは、参加した大勢のギャンブラーと「経験と勘」の価格が問題であったとある。確かに、企業の倒産確率は長期・多数でないと平準化しないだろう。<o:p></o:p>
つぎに、複雑なエキゾチック・オプションは、リスク回避のオプションではなく、投機目的の商品とある。「原子力でいえば発電ではなく高性能核爆弾の研究に相当する」というのは分かりやすい。<o:p></o:p>
さらに、「リアル・オプション」としてプロジェクト見直しの「選択権」が挙げられている。これは状況に応じた「選択」とキャッシュ・フローを評価する手法だ。ORで「決定分析」として60年代からあったが、最近脚光を浴びているとのことだ。大型都市開発プロジェクトなどは、必ず開発期間が延びるという分析がある。(景気が良いと更なる容積を狙い、悪化すると当面保留となるから)また、大型開発は柔軟な開発計画の見直しが有効で、グランド・プラン(目指すもの)とプロジェクト・スケジュール(当面の開発)の分離と調整を行うものが多い。(大阪北ヤードなどもその一例だ)<o:p></o:p>
また、エンジニアとMBAの違いは面白い。「エンジニア倫理」は考えさせられる。また、エンジニアは「HOW」だけ考え「WHAT」は要らないというのが一流であったが、筆者はあえて「WHAT」を考え、二流の道を歩んだと謙遜している。<o:p></o:p>