フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

9月2日(土) 快晴

2006-09-03 01:33:52 | Weblog
  秋晴れの一日だった。昼間から散歩に出る。栄松堂で鎌田敏夫『世界で一番ロマンチックな海』(角川文庫)を購入。鈴木ベーカリーでハムサンドとタマゴサンドを買って帰り、昼食の後、リビングのソファーで横になって読む。

          
               木漏れ日がまぶしいということ

  鎌田敏夫はTVドラマ『金曜日の妻たちへ』や『男女七人夏物語』など知られる脚本家である。脚本家の書く小説は会話が上手で、ストーリー展開がはやい。だからスラスラ読めてしまって、軽い感じがする。これはちょっと損なところで、「プロ好み」ではないから、直木賞の候補にはなれないだろう。でも、窓から入ってくる爽やかな風とは相性がいい。表題作は、高校二年の夏休みに砂浜でキスをした男女が、別々の人生を歩みながら(男は別の女と結婚し、女も別の男と結婚する)、途中で何度か寄り添い、20年後、その海岸の近くの病院で女が亡くなるのを男が看取るまでの物語だ。物語はこんなふうに終わる。

  「一生愛しあっていける人は、大勢いるわ。一生幸せに暮らしていける人も、いっぱいいる。でも、一生恋の出来る人は、めったにいないのよ。誰にも出来ないことを、私たちはしてきたの。これでよかったのよ。私は、そう思っている。だから、あなたも、そう思ってほしい」
  それから半年たって、葉子は、海の見える明るい病室で死んだ。

  葉子は「恋」という非日常的な行為を生涯にわたって欲した女性だった。そういえば『金曜日の妻たちへ』(1983年)に登場する女性たちも「恋」(ときめき)を欲していた。離婚が是認され不倫が魅力的なものに見えるようになったのはあの頃からである。社会の変動を見ていくとき、男性の意識や行動の変化よりも、女性の意識や行動の変化の方が指標になる。女性は簡単には動かない。しかし一旦動き出したらなかなか止まらない。女性が動き始めたら社会の地殻変動が始まるのだ。

          
              西の空で箒雲が一斉に蜂起した