フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

8月24日(金) 曇り

2007-08-25 02:20:02 | Weblog
  弘前大学で講師をしているT君が東京に出てくるというので、大学で会うことにする。昼食は彼が学生時代から足しげく通っている「メルシー」で食べようということになっているので、午後、昼飯はとらずに自宅を出る。
  出がけに読み始めた吉田秀和の「モーツァルトのコンチェルト」という文章が面白くて、続きは帰ってきてからというわけにはいかなくなり、重いのは承知で、それが収められている『吉田秀和全集1』(白水社)をショルダーバッグに入れていく。京浜東北線の車内で読み、東西線の大手町のホームでも電車を待ちながら立ったまま読んでいたら、電車が到着したので、本を閉じて車両に近づいたところ、ドアが開くことなく、そのまま発車してしまった(!)。でも、周りの人は何事もなかったような顔をしている。あれれと思って、すぐにわかった。本を読んでいてホームに電車が到着したことに気づかなかったのだ。電車到着、ドアが開く、客が降り、客が乗り、ドアが閉まる・・・ようやくこの時点で私はホームに止まっている電車に気づいたのだ。車内で読書をしていて駅を乗り越すことはたまにあるが、ホームで立ったまま本を読んでいて、電車に乗りそこなったのは初めてである。それだけ「モーツァルトのコンチェルト」が面白かったということである。
  キャンパスでは31号館高層棟の取り壊し作業が始まっているものと思っていたが、それは私の思い違いで、高層棟はまだちゃんとそこにあった。教員ロビーにも通常の入り口から入れた(明日からは入れなくなる)。大学へ来るのは2週間ぶりで、メールボックスには何通か私信が届いていた。夏休み中でも教員は毎日大学へ来ていると思っている方もいるのである。急いで返信を書かなくては・・・。
  T君が東京駅から研究室に直行でやってきたのは午後3時近かった。お土産に「しかないせんべい」をいただく。「しがない」せんべいではなくて(失礼な!)、「しかない(鹿内)せんべい」である。弘前の名産品で、T君はいつもこれをお土産として活用しているそうだ。あとから食べたらものすごく美味しかった。さくらSENBEI、こあき、らぷる、という3種類の品が入っていたが、私はとくに桜の花の塩漬を薄い煎餅の中に封じ込めた、上品な甘味と塩味のさくらSENBEIが気に入った。もし私が将来とんねるずの「食わず嫌い王決定戦」に出演することがあれば、「しかないせんべい」をお土産の一品にしようと決めた。対戦相手の鶴田真由さんにもさしあげよう。きっと気に入ってもらえるはずだ。
  「メルシー」で昼食。私はチャーハン、T君はもやしそば。食後の珈琲は「カフェ・ゴトー」で。あれこれ話をしたが、今日、彼から聞いた話で一番面白かったのは、彼は好きな女性と食事をすると食べものが喉を通らなくなるという話。へえ~、本当にいるんだ、そんな一昔前のTVドラマに出てくるような青年が。しかし、教え子の悩みをただ笑って聞いているわけにもいかないので、もしそういう場面になったら、そのことを相手に気づかれまいと悪戦苦闘しないで、正直に相手に話せばいい、相手もきっと悪い気はしないはずだから(か、かわいい、この人! と思ってもらえるかもしれない)、とアドバイスをしておく。
  帰り道、丸善丸の内店に寄って、文具コーナーで特売品のメモ帳を購入。表紙が四角い窓のように切り抜かれて、そこに紙細工の紫の花が置かれている(窓にはビニールが貼られている)。机の上に立てておけば飾りにもなる。300円で購入。蒲田に着いてから、新星堂でモーツァルトのピアノ協奏曲第9番(K.271)の入ったCDを探す。「モーツァルトのコンチェルト」で取り上げられていた作品である。モーツァルトのCDはたくさんあるが、ピアノ協奏曲第9番が入っているCDは一枚しかなかった。ゲザ・アンダの指揮(ピアノも)、ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団の演奏で、ピアノ協奏曲第8番と一緒になっていた。帰宅してさっそく第9番を聴く。これまで20番台の作品ばかり聴いていたが、初期の作品にもこんなにいいものがあったのかと、遅まきながら知る。