フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

8月25日(土) 晴れ

2007-08-26 02:07:05 | Weblog
  初台の新国立劇場オペラ劇場で牧阿佐美バレエ団の公演「アビアント」を観た。「アビアント」は牧阿佐美バレエ団のオリジナルで、故高円宮憲仁親王の追悼作品として昨年初演され、今回はその改訂新製作とのことである。原作台本が島田雅彦、作曲が三枝成彰、音楽が大友直人指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団、と豪華(異色?)なスタッフである。
  話には聞いていたが、素晴らしい劇場である。座席も前から4列目で申し分ない。6月に五反田のゆうぽうと簡易保険ホールで「眠れる森の美女」を観たときとは違って、今日はダンサーひとりひとりの表情もはっきりと見て取れる。しかし、にもかかわらず、公演中、何度かウトウトしてしまった。音楽が心地よかったということもあるかもしれないが、主演の二人(ロバート・テューズリーと田中祐子)の踊りが目を見張るほどのものではなかったからだ。デューズリーはプログラムの写真(去年のものだろうか)よりも肥えた感じで、颯爽としたはかなさといったものが感じられない。これなら逸見智彦(黒服の男を演じていた)の方がよかったのではないかと思う。田中祐子は牧阿佐美バレエ団のトップダンサーであるから、こういう大舞台で主役を張るのは当然なのだろうが、年齢的なかげりはいかんともしがたい。哀しみに打ちひしがれて踊る場面はとても美しいのだが、喜びに満ちて踊る場面では輝きが不足している。若手のツートップ、伊藤友季子と青山季可が登場する場面はほんの少ししかなくて、それを楽しみにしていた私には物足りなかったが(多くの観客もそうだろうと思う)、二人が登場したときのハッとするほどの輝きは、だからこそ二人の登場する場面は少なく抑えられているのだと逆説的に理解せざるをえないものがあった。出番の多いダンサーの中で、一番充実した踊りをしていたのは、冥界の女王を演じた吉岡まなみと娼婦を演じた橋本尚美の二人だろう。
  次回の牧阿佐美バレエ団の公演は10月20日・21日(ゆうぽうとホール)の「ヴァンティアン:スターレット」で、これは若手中心の公演である。いまから楽しみだ。