10時、起床。昨夜はちょっと夜更かしをしてしまった。2時には寝て、8時には起きたいものである。朝食はハム&エッグ、トースト、紅茶。目玉焼きを作るときいつものサラダ油が見つからなかったので、ゴマ油を使う。香ばしいが、カロリーは高いらしい。でも、私は目玉焼きは醤油で食べるので、ゴマ油は合っている気がする。
あれこれの用件のため昼から大学へ。キャンパスの桜はまだ見ごろを過ぎてはいない。今週一杯はなんとか大丈夫だろう。雑用を片付けてから、遅い昼食を「西北の風」にとりにいく。ナポリタンを注文。前回初めて食べたときほどの感動はなかったものの、柔らかな甘味がいい。サラダとガーリックトーストもなかなか。3時近かったので、客は私以外に一組しかいなかった。15階の窓から見下ろすと大隈講堂も大隈庭園も箱庭の一部のように見える。授業は来週からだが、サークルの新入生歓迎コンパでもあるのだろう、たくさんの学生たちがいる。帰りがけに、飯田橋でちょっと下車して、堀端の桜並木を見物する。
大隈講堂前
大隈庭園
飯田橋駅前の牛込橋から
神楽坂下の交差点
電車の中で『明暗』を読んでいたら、こんな箇所があった。藤井宅を後にした津田と小林が酒場で話をする場面だ。小林は近々朝鮮の新聞社で働くことになったらしい。(三十六節)
「こう苦しくっちゃ、いくら東京に辛抱していたって、仕方がないからね。未来のない所に住んでいるのは実際厭だよ」
その未来が朝鮮へ行けば、あらゆる準備をして自分を待っていそうな事をいう彼は、すぐ又前言を取り消すような口も利いた。
「要するに僕なんぞは、生涯漂浪して歩く運命を有って生まれて来た人間かも知れないよ。どうしても落ち付けないんだもの。たとい自分が落ち付く気でも、世間が落ち付かせて呉れないから残酷だよ。駆落者になるより外に仕方がないじゃないか」
「落ち付けないのは君ばかりじゃない。僕だってちっとも落ち付いていられやしない」
「勿体ない事をいうな。君の落ち付けないのは贅沢だからさ。僕のは死ぬまで麺麭(パン)を追懸けて歩かなければならないんだから苦しいんだ」
「然し落ち付けないのは、現代人の一般の特色だからね。苦しいのは君ばかりじゃないよ」
小林は津田の言葉から何等の慰藉を受ける気配もなかった。
『明暗』が朝日新聞に連載されたのは大正5年のことである。流動化社会における流動的人生(リキッド・ライフ!)。津田も小林もわれわれと同じ「現代人」である。
あれこれの用件のため昼から大学へ。キャンパスの桜はまだ見ごろを過ぎてはいない。今週一杯はなんとか大丈夫だろう。雑用を片付けてから、遅い昼食を「西北の風」にとりにいく。ナポリタンを注文。前回初めて食べたときほどの感動はなかったものの、柔らかな甘味がいい。サラダとガーリックトーストもなかなか。3時近かったので、客は私以外に一組しかいなかった。15階の窓から見下ろすと大隈講堂も大隈庭園も箱庭の一部のように見える。授業は来週からだが、サークルの新入生歓迎コンパでもあるのだろう、たくさんの学生たちがいる。帰りがけに、飯田橋でちょっと下車して、堀端の桜並木を見物する。
大隈講堂前
大隈庭園
飯田橋駅前の牛込橋から
神楽坂下の交差点
電車の中で『明暗』を読んでいたら、こんな箇所があった。藤井宅を後にした津田と小林が酒場で話をする場面だ。小林は近々朝鮮の新聞社で働くことになったらしい。(三十六節)
「こう苦しくっちゃ、いくら東京に辛抱していたって、仕方がないからね。未来のない所に住んでいるのは実際厭だよ」
その未来が朝鮮へ行けば、あらゆる準備をして自分を待っていそうな事をいう彼は、すぐ又前言を取り消すような口も利いた。
「要するに僕なんぞは、生涯漂浪して歩く運命を有って生まれて来た人間かも知れないよ。どうしても落ち付けないんだもの。たとい自分が落ち付く気でも、世間が落ち付かせて呉れないから残酷だよ。駆落者になるより外に仕方がないじゃないか」
「落ち付けないのは君ばかりじゃない。僕だってちっとも落ち付いていられやしない」
「勿体ない事をいうな。君の落ち付けないのは贅沢だからさ。僕のは死ぬまで麺麭(パン)を追懸けて歩かなければならないんだから苦しいんだ」
「然し落ち付けないのは、現代人の一般の特色だからね。苦しいのは君ばかりじゃないよ」
小林は津田の言葉から何等の慰藉を受ける気配もなかった。
『明暗』が朝日新聞に連載されたのは大正5年のことである。流動化社会における流動的人生(リキッド・ライフ!)。津田も小林もわれわれと同じ「現代人」である。