7時半、起床。
ホテルの部屋のテレビで『なつぞら』の初回をリアルタイムで観る。オープニングの映像がアニメなんだ。朝ドラ史上初めてか?
空襲のときの映像は『蛍の墓』を思い出して胸が痛んだが、森と草原の映像は『アルプスの少女ハイジ』を思わせる。スピッツの歌う主題歌も映像に合っていて、これなら録画で観るときもスキップしないで聴きたくなる。『ひよっこ』のとき(桑田佳祐の歌う『若い広場』)と同じだ。期待できそうだ。
最近は朝食は付けないプランでホテルを利用している。近所のコンビニで買ってきたサンドウィッチやスープを部屋で食べることが多いのだが、今日はカフェに朝ごはんを食べに行く。少し歩くのだが(のんびり歩いて20分くらい)、旅先の朝の散歩は気持ちがいい。気温は低いが陽射しがあるので体感温度はそんなに低くはない。
途中で「ラボラトリア」(このビルの2階)の前を通る。何度か来たことのあるカフェだ。
松本駅からだと12分くらいの住宅街(今町通りから常念通りに入ったあたり)。
めざすカフェはありました。
カフェ「ユキ・リ」。去年の9月にオープンしたばかりのカフェだ。
カウンターに椅子が4脚。
2枚の天板をちょっとずらしてつなげた大きなテーブルが1つ。あと、2人用の座面の低いクッションベンチがあるが、先客の女性が座っている。
あさごはん定食を注文。トーストとコーヒーのモーニングならどこのカフェでも出しているが、和定食は珍しいだろう。
惣菜5種がお盆に盛られている。 まず目で楽しみ、そしえ味わう。
土鍋で炊いたご飯も美味しいが、長ネギがトロトロの味噌汁が旨い(お替りをお願いしたかったが我慢する)。
食後にコーヒー。 先客の女性や近所の人が入ってきて若い女性の店主と話している。混雑はしていないが、地元の人に愛されているカフェであることがそれでわかる。
卒業式の日に撮った写真を貼った絵ハガキ。4枚の写真から構成されていて、3枚は同じ集合写真だが、1枚は一人一人の学位記授与のときの写真(私とのツーショット)。これは東京を出る前に準備しておいた。一人一人の顔を思い浮かべながら、メッセージを書く。
店を出るときこの辺にポストはありますかと尋ねると、この道をちょっといったところにあるという。
ありました。松本城西郵便局。葉書を投函する。明後日には届くだろう(住所のわからない人には東京に返ってからメールに写真添付で送ります)。
交差点で信号が赤に変わるのを待っていたら、 近所の保育園のお散歩の一行が前を通った。「こんにちは」と職員さんたちに挨拶をされる。「こんにちは」と挨拶を返す。
松本城公園の端っこのところに来た。入ってみよう。
松本城は美しい城である。松本に来たとき、3回に1回くらいしか来ないが、来れば来てよかったと思う 。
みなこの美しい城を背景に写真を撮っている。
桜はまだ咲いていないが、梅が咲いている。この時点ではまだ新しい元号が梅に因んだものになることは知らなかった。
柳の新緑も美しい。
お濠には白鳥が2羽浮かんでいた。
松本城公園を出て、大尿町通りを歩く。
「紫陽花」という上品な名前のカフェ。昔からあるカフェのようである。
古書「青翰(せいかん)堂書店」。
お城のそばの古書店らしい。
今日は定休日のようで中には入れない。内藤洋子が表紙を飾る『春のあみもの集』という雑誌があった。私が中学生の頃、酒井和歌子と内藤洋子は男子の人気を二分していおり、私は酒井和歌子派だったが、いま思うと、内藤洋子もよかったな(笑)。
旧制松本高校(現信州大学)出身の北杜夫の小説『木精(こだま)』。大学3年生のとき、ヨーロッパに行く飛行機の中で読んで、たちまち魅了され、旅行のスケジュールを変更して、小説の舞台となったドイツ(当時は西ドイツ)南部の古い大学街チュービンゲンを訪ねた。間違いなくわが青春の一冊である。
四柱神社に挨拶に行く。 本当は旅行初日に行くべきだった。
一日遅れですみません。またやってまいりました。
そろそろ新元号発表の時間である。ホテルに戻り、部屋のテレビで観る。
新元号は「令和」。「レイワ」と聞いて、一瞬、背筋がヒヤッとしたのは、「レイ」という音から「冷」や「霊」という字が頭に浮かんだせいである。それから、少し間を置いて、「レイナ」という名前のゼミの卒業生2人の顔が浮かんだ。
ア行かカ行ではないかと予想していたので、ラ行とは意表を突かれた。記者には読みのアクセントについて質問してほしかった。「レイワ」なのか「レイワ」(ノーアクセント)なのか。菅官房長官はノーアクセントで読んでいたが、そういうことなのか。また、アルファベットの表記の頭文字は「R」なのか「L」なのか(たぶん[R」だと思うが)。しかし、記者はそういう実用的なことではなく、官房長官が「それはお答えできません」としか答えようのない質問をしていた。
アナウンサーは「令和」の出典が『万葉集』であると説明した。国書が出典というのは初めてだが、「令和」という言葉がそこにあるわけでなく、梅の花を詠んだ32首のための序文から「令」と「和」の二字をチョイスして組み合わせた造語である。だからキーボードで「reiwa」と打って変換しても「令和」とは出てこない(「例話」と出る)。さきほど松本城公園で見た梅の花が頭に浮かんだ。
その32首の中の1首。
春さればまづ咲く宿の梅の花ひとり見つつや春日暮らさむ 山上憶良
*「春されば」=「春が来ると」
アナウンサーは「後ほど安倍首相ご本人から説明があります」と言った。「ご本人」とは「新元号を決めたご本人」ということだろう。あらかじめ「本命」という「第一候補」が決まっていなければ(複数の案がフラットな形で提示されて「さあどれがいいでしょう」とやったのでは)、今朝の9時から11時半までの間に、たくさんの会議体を経て、決定・発表に至るのは無理である。どの会議体も「わかりました。首相に一任します」ということで通過したのであろう。だから世間で予想されていたような「安」の字は使われなかったのである。自分の名前の一部を使うのはさすがにはばかられるでしょ。 「和」は「昭和」で使われたばかりだが、よい時代だった「昭和」よもう一度という願いが込められているように思う。もちろん「戦後の昭和」ですけど。
街頭インタビューでは、若い人たちの反応は概してよいようである(よいもので編集した可能性はあるが)。それはよいことだ。「令和」は彼らの時代なのだから。ケチをつける人たちは必ずいる。でも、そういう人たちの多くは、どんな元号になってもケチをつけるだろう。「令和」と決まったのだから、それがよい時代になるようにしていこうではありませんか。
それにしても私が官房から依頼されて提案した「孝治(こうじ)」という案は箸にも棒にもかからなかったようである。★後記:最後に残った6案の1つ「広至」(こうし)とかぶっちゃたのかな。
再び外に出る。
高砂通りを行く。
人形店の多い通りである。
五月人形で賑わっている。
その通りの先にある蕎麦屋「源智のそば」に入る。
えごま蕎麦を食べさせてくれる店だ。
えごば蕎麦のほかにも何か頼もう。
わさびの味噌漬け。茗荷の漬物が添えられている。
蕗の薹の天ぷらは塩で。
えごま蕎麦をざるで。
えごまとは胡麻ではなく、紫蘇の実の一週である。でも、風味は胡麻に似ている。
蕎麦湯で一服。
店の外、源智の湧水がある場所に石で造られたベンチがある。
「やすもう花 すわろう葉」。これって童謡「たきび」の「あたろうか あたろうよ」のもじりですね。
すわってみる。
(続く)