フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月20日(土) 晴れ

2010-03-21 02:25:09 | Weblog

  8時、起床。ソーセージとキャベツの炒め、トースト、牛乳の朝食。届いたばかりのムターの演奏するバッハのヴァイオリン協奏曲のCDを聴く。

  午後、散歩に出る。時刻は3時になろうとしていた。多くの食堂、レストランは通し営業ではなく、ランチタイムとディナータイムの間に休み時間を設けていて、店頭に「準備中」という札を出しておく。ランチタイムは午前11時30分から午後2時までの2時間半というのが標準的だろうか。この「午後2時まで」というのが悩ましいところなのである。普通に会社勤めをいている方には何の問題もないであろうが、私には「午後2時まで」というのは少々早いという感じがするのである。これが「午後3時まで」だと申し分ないのだが。私は朝起きてすぐには朝食をとらない。机に向かって文字通り「朝飯前」の一仕事をして、空腹を覚えてから朝食をとる。9時から10時あたりのことが多い。昼食も時間が来たらとるのではなくて、空腹を覚えたらとるので(その方が食事が美味しい)、2時近くになることがしばしばある。時計を見ながら、いま家を出ないとお目当ての店が閉まってしまうなと思いつつ、仕事をしていることがよくある。「2時まで」というのはラストオーダーの時間だが、店で働いている人のことを考えると、2時ギリギリに飛び込むのは申し訳ないような気がするので、私の基準では、ランチタイムは「2時まで」ではなく、「1時45分まで」なのである。そうすると1時半過ぎには支度をして家を出なくてはならないわけで、この時刻、私の腹時計はまだ空腹を覚えていない場合がある。
  こういうときにありがたいのが食事のできる喫茶店である。喫茶店には休憩時間がない。みんなが休憩している時間が喫茶店の稼ぎ時なのである。というわけで、昼食をとりに「ムッシュ・ノンノン」へ行く。玉子サンドイッチと珈琲。

  南海堂書店で『現代の推理小説』全4巻を購入。西蒲田公園のベンチで読もうかと思ったが、早咲きの桜の下の日当たりのいいベンチは占拠されていて、日陰のベンチしか空いていなかった。

  「シャノアール」に行って、アイスココアを注文し、第4巻所収の木々高太郎「新月」を読む。53歳の男が22歳の女と再婚をして、その女が2年後に芦ノ湖で水死をするのだが、それは事故ではなく夫が殺したのではないかと女の親族が疑い、その疑いを背景として弁護士に慰謝料請求の依頼をするという話で、「或法律事件で、代理人となって相手に折衝している間に、相手の人物にすっかり敬服したのは、私の長い弁護士生活のうちでこの一例より外はない」という書き出しで始まっている。上手い書き出しである。どうしたって先が読みたくなる。昭和21年5月に発表された作品である。

  サンドイッチ店「maruharu」に電話をして、30名でお願いしますと伝える。36名中、「出席」30名、「欠席」1名、「出欠不明」5名である。ケーキはホールを2台でいいですかと聞かれたので、それは何人分ですかと尋ねると、店で出すときは1台を8等分していますとのこと。2台で16名分か・・・。サンドイッチとオードブルを食べた後だから、16等分して32人分でもいいかと思ったが、いや、まてよ、甘いものは別腹というし、圧倒的に女子学生が多いことを考えると、ケーキは十分に用意しておかないと、食べ物の恨みは怖いからなと考え直し、予算を5千円上乗せしますから、ホール4台でお願いしますと告げる。これで本格的に32人分だ。文句はあるまい。


3月19日(金) 晴れ

2010-03-20 13:35:05 | Weblog

  8時、起床。炒飯の朝食。近所のTさんが来て、桜の木を見てくれる。壁の塗り替えにあたって家の周りに足場を組むのだが、そのため、壁の近くに植わっている木が損傷する恐れがある。母が一番大切にしている小さな桜の木を壁から離れた場所に植替えるのが安全だろうというこで、母がTさんに依頼したのである。Tさんはすでに引退した元証券マンだが、植木のことはセミプロで、近所の人たちは植木のことは何でもTさんに相談している。Tさんは桜の木を見て、「大丈夫です。今日の午後にでも植替えてしまいましょう」と言ってくれた。私も大学を退職したらTさんのように地域社会のお役に立てる人間になりたいものである。

  午後から大学へ。病気のため授業が担当できなくなった先生の後任の件で大薮先生と相談。事務所へ行って演習0次登録の状況について確認。教務の先生と来年度(2011年度)のカリキュラムの件で相談。その他、諸々の雑用を片付ける。
  私のゼミの2年生・3年生の顔合わせパーティーのデリバリーを頼んでいるサンドイッチ店「maruharu」のマダムから研究室に電話が入る。人数の確認。一応、30人で。でも、最終的な確定はもう1日待ってもらう。サンドイッチ、オードブルー、ケーキ。みんな、もっと食べるだろうか。でも、黙々と腹いっぱい食べることが目的ではなく、顔合わせ=社交が目的の立食パーティーだからね。お腹が空いていたら家に帰ってからカップヌードルでも食べてねと。
  二文の社会・人間系専修の卒業記念のUSBメモリーが完成した。学生や教員らの映像とメッセージが多数収録されている。とりあえず自分が出演しているところを見てみる。うん、秀逸だ。制作に携わったみなさん、ありがとう。

  夜、大薮先生からメールで、適任の方が見つかったとのこと。講義内容はもちろん、曜限も既定の時間帯でOK、これ、奇跡的といってもよいのではなかろうか。神様っているんだな、と思った。


3月18日(木) 晴れ

2010-03-19 09:44:55 | Weblog

  7時、起床。ピーマンの肉詰め、トースト、冷麦茶の朝食。
  10時、昨日に続いて「オンテックス」のT氏来る。壁の塗装の色の相談。ある程度までは絞り込めるが、そこから先が一気にというわけにはなかなかいかない。現状に近いものにするか、あるいは違う系統のものにするか、まずはそれを決断しなければならない。近所に実際に工事を請け負った住宅があるというので、妻と一緒に自動車で連れて行ってもらう。見本帳で見る印象と現実の住宅に塗られている色とは受ける印象が違う。外光の加減があるし、それになにより見本帳の断片で見るのと丸ごと家一軒塗られているのを見るのとでは、スケールが違うわけだ。一般的に行って、見本帳で見るより実際に家の壁に塗ったものの方が色が薄くなる感じだ。結局、今日も決まらなかった。
  午後、自転車に乗って梅屋敷のファミリーマートへ行く。先日電話で申し込んだムターの演奏会のチケットをそこで受け取るためである。自宅の近くにあるコンビにはセブンイレブンばかりで、一番近いファミリーマートが梅屋敷駅前なのである。店内にある機械に電話で言われた9桁の番号と自宅の電話番号の末尾4桁を入力するとチケットの交換券が出てくる。それをレジに持っていって、代金を払ってチケットを受け取るというシステムである。初体験であったが、郵便局の機械でお金を振り込むときよりも操作は簡単だった。
  昼食は梅屋敷商店街にある「琵琶湖」でソーセージとトマトのビザと珈琲。「琵琶湖」は個人経営の喫茶店としてはかなり広い方だと思うが、私がピザを注文して待っているときは、10幾つかあるテーブルが全部客で埋まっていた(もちろん全部の椅子がではない。4人がけのテーブルに一人客が座っている場合が多い)。これなら十分にやっていけるだろう。活気のある商店街にある喫茶店の強みだ。

  家族への土産に甘納豆(石井商店)と鶏の唐揚げ(鳥久)を買って帰る。「石井商店」は弁天様の近く、産業道路沿いにある、一見するとかなり昔からあるお店のように見えるが、まだ開店して10年は経っていないのである。ずいぶんと年季の入った店舗のように見えますがと私が言うと、ご主人曰く、「はい、そういうふうに見せているのです」。な、なるほどね。甘納豆にはいろいろと種類があるが、ミックスで入っているものを購入した。「鳥久」は東邦大学病院のそばにあり、弁当を販売する店舗と惣菜を販売する店舗が隣り合っている。鳥の唐揚げは1個150円くらい(「くらい」と書くのはグラムで販売しているため)。4個購入。私はケンタッキーフライドチキンよりもここの鳥の唐揚げの方がずっと美味しいと思う。

  一昨日と同じ光景を見た。一昨日とは全然別の場所で、したがって別の保育園の子どもたちであろう。ということは、こういうワゴンに子どもたちを乗せてのお散歩(子どもたちは歩いていないから「散歩」という表現は正しくない。「外出」か)が広く普及しているということであろう。たぶん公園かどこかへ子どもたちを連れて行って、そこで遊ばせるのであろう。まさか保育園の周りをぐるっと一周してそれで終わりということはあるまい。昔、竿竹や豆腐を売って歩くビジネスがあったが、思わず、「子どもはいりませんか~」と声に出してみたくなる光景である。近未来SF映画の一場面みたいだ。

  夜、ゼミの学生たちに顔合わせパーティーへの出欠を問うメールを送る。数人からはすぐに返信があったが、反応が鈍い。メールをチェックしていないのだろうか。いま、このブログを読んでいる君、いますぐメールをチェックしようね。

  蒲田アカデミアの催し、ボブ・ディラン来日記念特別企画「五十嵐正、ボブ・ディライン、キャロル・キングを語る」が明日あります。詳しくはこちらを。金沢に出かける日の朝にお知らせをいただいたので、そのままになっていました。ごめんなさい。


3月17日(水) 晴れ

2010-03-18 18:21:37 | Weblog

  7時、起床。ハムカツ、トースト、珈琲の朝食。
  10時、塗装会社「オンテックス」の営業のT氏来る。3時間ほど妻と一緒に詳しい説明を聞く。当初はハウスメーカーにお任せでメンテナンスをするつもりでいたのだが、割高なことと、塗装の品質がわれわれの期待する水準ではないので、塗装専門の会社に直で依頼することにしたのである。支払う金額は同じでもワンランク上の塗装をしてもらえることがわかったので、契約書にサインをする。3月中(年度内)に着工すると値引きしてもらえるので、25日の着工になった。工期は2週間。問題は色である。これは今日決めなくてもいいので、明日に持ち越しになった。
  昼食および散髪のために外出。「ムッシュ・ノンノン」で、昨日は夕食前なので注文しなかった名物のスパゲッティ・ナポリタンを注文する。腹ぺこだったので(すでに2時である)、大盛りを頼もうかと思ったが、初めての注文なので様子を見ることにしたが、普通でも十分なボリュームだった。This is it! これぞまさにスパゲッティ・ナポリタンというべきものである。麺の一本一本にケチャップがしっかりとコーティングされている。強火のフライパンの上で何度も麺を跳ね上げなければこうはならない。箸でかきまぜただけではダメなのだ。ケチャップはデルモンテを使っているとのこと。

  昨日は客は私ひとりだったが、今日はマスターの知り合いや奥さんがいて、四方山話をされていた。マスターは去年だったか一昨年だったかに不整脈の手術をして、そのときに心臓に穴が空いてしまい、以来、調子がよろしくないのだそうだ。年齢は私よりも一回り上で、手術の前まではオートバイでよく遠出をされていたそうで、店の前にはそのイエローのオートバイが置かれている。

  「ムッシュ・ノンノン」を出て、床屋に行く。待っている客が2人いたが、職人さんは4人いるので、ほどなくして順番が回ってきた。私にしては珍しく散髪中に居眠りをする。昼食の直後だからか、旅行の疲れが出たのか、どちらなのかわかない。たぶん両方だろう。
  帰宅してメールをチェックすると、事務所から緊急事態の発生を知らせるメールが届いていた。春期の演習を担当されている先生の一人が、体調を崩されて授業ができなくなったそうだ。すでに科目登録は始まっているので、休講となると面倒なことになる。かといって同じ内容で、しかも特定の曜限で、やってもらえる代わりの先生をこの2週間で捜すのは難しい。さあ、どうしよう。何人かの先生と電話で相談する。この一件でここ数日引きずっていた旅行気分は払拭され、論系主任モードに切り替わる。身体のどこかで「カチッ」と音がした。(→代わりの先生、見つかりました)


3月16日(火) 薄曇り

2010-03-17 21:06:38 | Weblog

  8時、起床。カレー、トースト、冷麦茶の朝食。フィールドノートの更新。今日は春爛漫の陽気だ。金沢の名曲喫茶「はるてぃーた」で偶然耳にしたアンネ=ゾフィー・ムターとイギリス室内管弦楽団によるバッハのヴァイオリン協奏曲のCD(中古)をアマゾンで捜して注文する。そのとき、ムターのことをネットで調べいて、彼女の日本での公演が4月24日にサントリーホールであることを知る。しかも3つの演目のうちの一つが、「ぱるてぃーた」で聞いたヴァオイリン協奏曲イ短調ではないか。これも何かの縁だと思い、電話でチケットを予約する。
  10時頃、自宅の築10年目の点検チーム(総勢4名)が自動車3台でやってくる。それぞれの担当分野があるようで、土台、梁、壁、屋根、ベランダ、ドアやサッシを手分けして点検する。ドアが専門の人に猫がドアを開ける件を相談したら、新しく鍵をつけるよりも、いまのL字の取っ手を水平ではなく、垂直に付け直せば猫がぶら下がれなくなるのではないか、その作業はいま無料でしますよと言われる。そんなことが簡単にできるのか。さっそく試しに書斎のドアノブをそうしてもらう。なるほど、これはコロンブスの卵だ。リビングのドアノブも同様にやってもらう。この裏技のお陰で、新しい施錠の取り付け費用1万9千円を節約することができた。

  点検作業終了後、主任の人から点検結果の説明を受ける。人間ドックの結果を知らされるときみたいでちょっと緊張する。とくに大きな問題はないとのこと。で、話題は10年の保証期間がこの8月で切れるので、ここで壁の塗りかえ等のメンテナンスをして新たに10年保証の手続きに入るかどうかという点に移る。3階建ての住宅ゆえ、足場の設置や、壁の塗り換えにはかなりの費用がかかる。詳しい見積もりは後日お持ちしますが、概算で300万円ほどかかるとお考えくださいとのこと。300万円ね。贅沢をしなければ、男一人が1年間きままな旅を続けられるだけの金額だ。
   午後、床屋へ行く。ところが店の前まで行ってみると、本日休業の貼紙がしてある。来週は月曜(祝日)も営業するから今週は月・火の連休ということのようだ。髭は床屋さんで剃ってもらうつもりだったので、朝の髭剃りはしていない。無精髭のまま散歩に移行する。
  「シャノアール」でアイスコーヒー。今日はアイスコーヒーを注文するお客さんが多いですとウェイトレスさんが言っていた。A4のノート(方眼)を開いて、「一人旅の楽しみ方」というテーマでマインドマップを描いてみる。旅行から戻った直後だから反省点を踏まえながら実践的に描く。折を見てちゃんとした文章にまとめよう。どのような経験を文章にする場合でもそうだけれど、できるだけ間を置かないで、こうした仕込みの作業をしておけば、時間が経ってから本格的に文章化をするときまで、経験の鮮度を保つことができる。

  「シャノアール」を出て、駅前の商店街を歩いていたら、こんな光景に出会った。近所の保育園のお散歩タイムのようだ。道行く人たちの注目を集めていた。なるほど、こうすれば、少ない数の保母さんでたくさんの子どもを安全に散歩させることができる。でも、なんだか、ワゴンの中の子どもたちが市場に運ばれる子牛たちのように見えなくもない。どこからか「ドナドナ」のメロディーが聞こえて来そうだ。

  「ムッシュ・ノンノン」の前を通ると今日はオープンしていた。このところずっとシャッターが降りていて、体調がすぐれないためしばらく休みますという貼紙がしてあったので、気になっていたのだ(以前にもそういうことがあった)。「ムッシュ・ノンノン」は行きつけの店というわけではないが、ほっとする。店に入ってみると客は私だけで、ココアを注文して、マスターとおしゃべりをする。回復されたといっても健康状態は必ずしも万全ではないようで、でも、笑いながら、このまま閉店していまうのはくやしいからと言っておられた。「ムッシュ・ノンノン」の開業は1970年代半ば。世の中が大量生産社会から消費社会へと移行しつつあった頃で、喫茶店は活況を呈していた。その頃、大学生だった私も授業と授業の間の空き時間を「ブルボン」や「オリエント」や「早稲田茶房」といった喫茶店(すべていまはもうない)で過ごしたものである。現在の喫茶店を支えているのは当時若者だった世代で、最近の若者は喫茶店をあまり利用しなくなった。コンビニ弁当やカップ麺をベンチで食べたりしている。喫茶店に来る客も、不況のせいだろう、スパゲティなどのフード類だけ注文して、飲み物は注文しない人が増えたという。へぇ、せちがらくなったものである。喫茶店文化=珈琲文化は「豊かな時代」に咲いた徒花だったのだろうか。

  フランス人のバカンスが3週間なのは、最初の1週間で日常からの離脱をはかり、真ん中の1週間で休暇を謳歌し、最後の1週間で日常に復帰する準備をするためだ、という話をどこかで読んだことがある。私は5泊6日の金沢旅行を心から楽しんだが、日常からの離脱は東京から金沢までの列車の中の4時間で済ませた。しかし、日常への復帰は金沢から東京までの列車の中の4時間では無理である。今日もまだ旅行気分が抜けていない。蒲田の街を旅行者のような気持ちで歩いている。