フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

7月20日(木) 晴れ

2017-07-21 03:55:26 | Weblog

8時、起床。

 トースト、カレー、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

牛乳はガラスのコップに入っている。ブログ仲間の「多田さん」のブログ(笑う門には福来る)に私が「コップ」という言葉を使っていることについて書いてあった。多田さんは長年飲食業界で働いてきた方だが、そこでは「コップ」という言葉はまず使われないそうだ。では、なんというのかというと、「グラス」というのだそうだ。そうなのか。そういわれるとそうだなと思う。

お昼に家を出て、大学へ。

7月19日と7月20日ととではずいぶんと違う。「18」と「19」の間は連続的だが、「19」と「20」の間は一段階進んで感じがする。「夏休み」という言葉を口に出してもいいように思う。実際、都内の小学校は今日、一学期の終業式が行われ、明日から夏休みだ。かつて大学は小学校より一足早く7月中旬には夏休みに入っていたが、いまは7月末まで授業期間だ。誰に聞いても(学内では)、かつての方がよかったという。ならぼ戻せばよさそうなものだが、そうならないのが時流というものである。たしかに教室には冷房が利いている。通学の電車の中も冷房が利いている。でも、自宅から駅までの路上、駅から学校までの路上は、猛暑である。この点を忘れてはいけない。

大学に到着した時点でかなりエネルギーを消耗している。

3限は大学院の演習。

それをすませて昼食は研究室でおにぎり。

3時からKさんのゼミ論指導。シュークリームの差し入れをいただく。おにぎりは2つにしておくべきだった。

5限は講義「日常生活の社会学」。パワポのスライドのファイルを入れたUSBを自宅に忘れてきてしまった。猛暑のせいだ。幸いプリントアウトしたものは鞄に入っていたので、それを書画カメラでスクリーンに映して授業をする。授業で使う資料の一部を研究室に忘れて来てしまった。これも猛暑のせいだ。映像資料を流している間に取りに戻る。授業の最後に来週の教場試験の話をする。みんな、授業よりも真剣に聞いていたかもしれない。答案というのは「私は授業の内容をちゃんと理解しています」というアピールである。それをお忘れなく。

帰りに「あゆみブックス」に寄って『将棋世界』8月号を購入。「電王戦」の第2局(佐藤名人が将棋ソフト「ポナンザ」に敗れた将棋)の棋譜が載っていたからである。電車の中でじっくり読む。先手(佐藤名人)の●2六歩に後手(ボナンザ)が○4二金と定跡にない(常識外れの)手を指して話題になったが、私に理解できなかったのは、そこから●2五歩、○3二金と進んで、そこでなぜ名人が●2四歩と指さなかったのかということだ。そう指せば、○同歩、●同飛、○2三歩、2六飛という進行になり、先手だけ飛車先を切って、一歩を手持ちにできるわけで、不満はないように思うのだが、なぜそういう風に「自然に」指さなかったのだろう。コンピューターの注文(○4二玉としたときにコンピューターが想定していた進行)を外すという意味があったのだろうか。あるいは2六飛という浮飛車の形が将来的に弱点になると考えたのだろうか。昨年の電王戦では山崎八段が「ボナンザ」にいいところなく連敗したが、そのときの将棋も山崎八段の指し手は「自然さ」を欠いていた。相手がコンピューターということを過剰に意識して、その想定されるコースを外すような手を志向して、自分から指しにくい局面にもっていってしまったような将棋だった。棋譜だけを観るととてもプロの高段者の将棋ではない。今回の佐藤名人も、途中から穴熊に組み替えて、玉の守りの堅さで終盤勝負にもっていこうという戦術をとったが、的確に攻められて、一方的な終盤になってしまった。同じ負けるにしても、序盤、「先手だけ飛車先を切り、一歩を手持ちしてよし」という棋理に照らして「自然な」手を指した上で、負けた方がよかった。そうすれば、従来の「棋理」を一から見直そうという一種の宗教改革、あるいは科学におけるパラダイム転換が起こって、将棋の進歩が新しい次元に入っていくことを名人が先導する結果になっただろう。実は、結果は同じで、名人の敗戦を観て、プロ棋士の多くはそういう宗教改革やパラダイム転換の必要を感じることになった訳だが、名人が「棋理」に殉じて敗れるのと、「棋理」に反して敗れるのとでは、大きな違いがある。「名人」というのはたんなるタイトルの一つでなく、(人間の)棋界の第一人者という意味づけを将棋ファンの多くはもっているからだ。名人には棋理の体現者として盤に向かってほしかった。

夕食はラムチョップ、サラダ、味噌汁、ご飯。

「ラムチョップは3本食べたい」という私の願いは今日も聞き入れてもらえなかった。夫も2本、妻も2本というのは一見、男女平等の理念に叶っているようだが、食欲の大きさの違いというのが考慮されないのは、道理に反しているのではなかろうか。妻もその点はわかっているはずだが、生協がラムチョップ4本入りで商品化している点が問題なのである。つまり私が3本だと妻は1本になってしまう。5本入りにしてくれるか、一本単位で注文できるようになるのがベストである。

蒲田の「有隣堂」でNHKの俳句のテキスト(8月号)を購入した。

先日、NHK全国俳句大会の案内状が届いた。投句の締め切りは9月末日。今回の題詠は「山」である。去年同様、自由題で二区、題詠で一句を作ろうか。それとも今回は新作15句一組の「飯田龍太賞」に(も)頑張って応募してみようかしら。投句料は前者の3句一組が3000円、後者の15句一組が5000円で、そんなに違わないのだ。

今夜は外が蒸し暑いらしく、冷房の効いた書斎でなつが寛いでいる。

4時、就寝。


7月19日(水) 晴れ

2017-07-20 00:42:51 | Weblog

8時、起床。

トースト+ベーコン、サラダ、日本茶(冷)、紅茶(温)の朝食。

卵と牛乳を切らしている。今日、生協から届く。

『ひよっこ』は主人公と慶応ボーイの恋人の楽しそうな場面が続く。こういう場面の後はたいてい悪いことが起きるのである。TVドラマのセオリーなり。現実の人生ではどうだろうか。経験的に言って、楽しさに「浮かれている」と悪いことが起きるのである。だから楽しい状態が続いているときは、「浮かれてはいけない」と自戒することにしている。そうするとけっこう楽しい状態が持続してくれるのである。

昨夜、「まやんち」の八代さんに7月下旬から8月下旬まで、つまり「ピーチメルバ」の期間に、「まやんち」に伺う日をリストにして送った。予約の確認と訂正のためである。先週の1回を含めて、今シーズンは11回伺って、10個のピーチメルバを食す予定である。なんで11個でないのかというと、1日に2回伺う日があるのだが、1日にピーチメルバ2個というのは私の中では禁じ手なので、その日の2回目の訪問のときは私はピーチメルバ以外のものを食すつもりだからである。単独での訪問は一回もない。私は「キング・オブ・ピーチメルバ」の称号を八代さんから授与されているが、実際のところは「キング」というよりも「伝道師」なのである。今朝、八代さんから届いた返信のメールには、「ついに一覧表作成とは!(笑)もう、朝から笑いが止まりません」と書かれていた。

9時半に家を出て、大学へ。

10時半から大学院の社会学コースの会議。

昼食は36号館のラウンジの売店で買ったチキンカツサンド。

本日は「作業をしながらの昼食」だ。

2時から教授会。ホッとすることや、びっくりすることや、うんざりすることあり。5時半までかかる。

帰りがけに生協戸山店を覗くと「ミシマ社」の本のフェアー(15%引き)をやっていた。3冊ほど購入する。

「シャノアール」に寄って行く。

久しぶりの「シャノアール」のクリームソーダ。以前は380円だったが、いまは410円。30円の違いだが、380円のときは割安感があったな。410円ではそれほど・・・。

買ったばかりの本にざっと目を通す。本屋→カフェは鉄板の充実コース、あるいは浮世からの離脱コースだ。

 谷郁雄(詩)・青山裕企(写真)『透明人間⇔透明人間』(ミシマ社)

 青山裕企『〈彼女〉の撮り方』(ミシマ社)

 木村俊介『善き書店員』 (ミシマ社)

7時半、帰宅。シャワーを浴びてから夕食。今夜はカレーライス。明日の朝もカレーだと思うと、嬉しい。

デザートは葛餅(の一種)。池上の葛餅屋で食べているのに比べると透明感があって、わらび餅の食感に近い。

食事をとりながら、『ハロー張りネズミ』の初回(録画)を観る。東京都板橋区下赤塚(東武東上線の池袋から7つ目)にある「あかつか探偵事務所」が舞台。瑛太と森田剛がタッグを組んで、さまざまな依頼に取り組んでいく。毎回、サスペンス、アクション、ホラーと話のテイストは違うらしい(そういうのは「ジャンルレス」というらしい)。初回は人情話だったが、ほろりとさせられた。原作は弘兼憲史の同名コミック。

書斎のデスク.のパソコンの向こうに猫の手が見える。

妻用のデスクの上でなつが寝ている。蒸し暑くなってから家の中で朝まで過ごすことはなくなった。外の方が風があって涼しいのだ。でも、ときどき挨拶には来る。

2時半、就寝。 


7月18日(火) 晴れ、一時雨

2017-07-19 13:25:08 | Weblog

7時半、起床。

パン、ベーコン&エッグ、サラダ、日本茶(冷)、紅茶(温)の朝食。

昼から大学へ。

3限は院生の研究指導。

4限に学生の面談2件。2件の面談の合間の時間に昼食をとる。崎陽軒のシュウマイ弁当。

折詰をどういう向きに置いて食べるのかについては4通り考えられる。

①縦に置いて、上がオカズ(下がごはん)。

②縦に置いて、上がごはん(下がオカズ)。

③横に置いて、右がオカズ(左がごはん)。

④横に置いて、右がごはん(左がオカズ)。

包装紙は縦書きになっているので、そのままの形で包装紙を破ると、①になる。それを理由として、①が正統なスタイルであると主張する人は多い。

しかし、私は③が一番しっくりくる。その理由を考えてみると、このブログの写真がそうであるように、私は横長の方に安定したものを感じる。食事は安定した気分で食べたい。さらに、私は右利きで、まずオカズを口に運んでから、それと対応する形でごはんを口には運ぶので、オカズが右側に配置されていた方が箸の運び(右から左へ)が自然である。

メインのシュウマイ以外にもあれこれオカズが入っていて、楽しめるお弁当である。人によってごひいきのオカズがあるようだが、私は鮪の煮付けが好きである。あの締まった歯ごたえと染み込んだ味加減がいい。

崎陽軒の焼売弁当が登場したのは昭和29年。つまり私と同い年である。その点からも私はゴジラとシュウマイ弁当に親しみを感じるのである。

5限は演習「現代人と社交」。

授業を終えて、大学へ出る。一時降っていた雨は上がった。

夕食は鶏肉と野菜の炒め、

かぼちゃのサラダ、味噌汁、ごはん。コップの中の赤っぽい液体は、トマトジュースではなくて、グレープフルーツジュース。

食事をしながら『過保護のカホコ』の初回(録画)を観る。主人公のカホコは社会学の勉強をしている大学生だが、たんに過保護なのではなく、軽度の発達障害をもっているようだ。母親は「この子は私が守る」とかたくななまでに構えている。父親は「そこまでしなくても」と思っているが、それを言えずにいる。ストーリーはカホコが同じ大学に通う画家志望の青年と知り合うことで変わっていく姿を描くというものになるだろう(変わるのは当然、彼女だけではなくて、母親もだろう)。このキーマンになる青年を演じるのが、『ひよっこ』で主人公の恋人役の慶応ボーイを演じている竹内涼真である。青年のキャラクターは違うが、高畑充希と有村架純はどこか似ている雰囲気があるので、「おや、まあ」と思う。妻曰く、「二つの連続ドラマに主役級で出続けるのは大変だから、『ひよっこ』の慶応ボーイの方は早々に主人公の前からいなくなるわね」。その予言はたぶん正しいだろう。身分違いの恋は短命で終わりますか・・・。

2時、就寝。


7月17日(月) 晴れ

2017-07-18 09:20:26 | Weblog

9時、起床。

サラダと紅茶のみの朝食。コップに入っているのは水出しの冷たい日本茶。冷たい麦茶もいいけれど、日本茶もいい。

昼食は妻と「phono kafe」に食べに行く。

玄米ビーフンの春巻(二人前)。

ベジミーとの唐揚げ(手前)、さつま芋のナッツサラダ(奥)。

ブロッコリーのタルタルソース添え(左)、ニラとこんにゃくのピリ辛和え(右)

デザートに桃パンを注文。メニューには書いていないが、お店のブログには出ている。

 「お客様からのご要望が多かったので、久しぶりに桃パンの復刻です花桃は無農薬や減農薬というわけにはいきませんが、桃がある時だけ提供したいと思いますDocomo50 基本的にはdocomo金曜日、土曜日docomo中心になりますし、数も1日に2~4皿位しか出せませんので、ぜったい食べたい方は、確認のお電話を頂いた方が良いかと思います星 桃パン2個で500円、ドリンクとセットで800円となります。」

美味しいですよ。

カフェ仲間の清水直子さんの作品展のDMがお店に置いてあった。

今週の19日(水)から23日(日)までの5日間。場所は西荻窪のセレクトショップ「FALL」。何度か伺ったことがあるが、あの通りには魅力的な店がたくさんある。

 「phono kafe」を出て、妻は仕事があるので家に戻り、私はちょっと散歩に。 

初めてのお使い?

いちご大福が100円とはずいぶん安いな。しかし、もともとそんなものなのかもしれないとも思う。

パブスナック「冬櫻」。「秋桜」は「コスモス」の別名だが、「冬桜」はその名の通り冬に咲く桜のことだろう。

「太田区民のつどい」。なんだか昭和っぽい雰囲気が漂っている。

裏通り。

祝日(海の日)の今日は郵便局はお休み。

クロス通りからバス通りを渡ってサンカマタ商店街へ。

サンカマタ商店街。西口で一番賑やかなアーケード街だ。

「冷やし麺はじめました」

「家具のデパート 亀屋百貨店」の店先。座ってもいいのかしら?

 「イナバ鞄店」の店先。相場を知らないのだが、そんなに安いのか?

「蒲田宝塚」と「テアトル蒲田」で上映中の作品。

サンカマタ商店街と並行しているサンロード商店街にある「蒲田食堂」。名前からすると昔からある店のようだが、そうではない。昭和レトロブームの中で開業した定食屋さんである。

「キシフォト」の店先。昔は名前の通りカメラの販売店だったのだが、いまはこうなっている。

東急プラザの「くまざわ書店」で本を購入。

 『ユリイカ』7月臨時増刊号「総特集:大岡信」(青土社)

 レイモンド・チャンドラー(村上春樹訳)『大いなる眠り』(早川書房)

高橋英世が高校時代の大岡信のことを書いていた。

「彼は椅子にすわりこんで話していなかった。たいていは立って誰かと話している。話しかけながら移動し、こちらが何かに気をとられているうちに、いなくなっている。瞬間的移動なのだ。このクラスではない、別のクラスへ、別の友人へ。私の想像だけれど、こうした速さは大岡信が一高に合格し、独仏合同のクラスに入った(入れられた)ことがきっかけで身につけたいったのではないか。その時から七十年余りが経過した今、ふとそういう想像が浮かんでくる。」(47頁)

夕食は炒めた茄子、ピーマン、アスパラをのせてぶっかけ蕎麦。

デザートは桃。

8月の中旬、お盆の頃に松本に行こうと思ったが、ホテルがとりにくい上に普段よりだいぶ高い。一週遅らせて行くことにした。

2時、就寝。


7月16日(日) 晴れ

2017-07-17 21:00:24 | Weblog

9時、起床。

トースト、目玉焼き、ウィンナー、サラダ、牛乳、紅茶の朝食兼昼食。

午後、西武池袋線の江古田へ行く。「江古田、久しぶりに降りたな」(『孤独のグルメ』の井之頭五郎のナレーション風)。

20年ほど前、武蔵大学で非常勤をしていた頃、毎週来ていた場所だが、駅舎は新しくなっていた。

南口に降りる。

 

文化通りを行く。

「江古田コンパ」という看板には見覚えがある。

どういう店かわからないが、ちょっと入りにく。

開演は4時半で、まだ30分ほどあるので、カフェで時間をつぶそう。脇途に2つのカフェがある。「ぐすたふ珈琲」と「カフェ・アース」、雰囲気はだいぶ違うようだ。

 

「ぐすたふ珈琲」に入る。

長いカウンターは以前この店はスナックであったろうことを物語っている。奥にテーブル席もあったが、この店の特徴はこの長いカウンター席であろうから、ここに座ることにした。

グラスに冷えた水が注がれた。今日の東京は今年一番の暑さである。冷えた水の美味しいこと!

 

アイスコーヒーを飲むつもりで入ったが、お冷が美味しいので、浅炒りのブレンドを注文。ネルドリップで丁寧に淹れられたコーヒーが小ぶりのカップで出てきた。

客は私一人だったので、マスターとあれこれおしゃべりをした。生来のおしゃべり好きというわけでは決してないのだが、カウンターに座るとおのずとそういうことになる。黙ってコーヒーを飲んでいる方が不自然である。「現代人間論系総合講座1」のレポート課題(選択)に「カフェに行ってお店の人とおしゃべりをする」というのを出したのだが、学生たちは上手くおしゃべりができているだろうか。

この店「ぐすたふ珈琲」は今年の5月に開店したばかりだそうで、やぱりその前はスナックだったそうである。

マスターのお名前は「ぐすたふさん」ではなく、「チノネさん」という。私の小学校のときの担任の女の先生と同じ名前である。出身は茨城の水戸のそばだそうだ。水戸といえば「梅」「納豆」・・・三つ目が出てこないが(笑)、梅の話や納豆の話、そして茨城弁の話をする。茅野さんは30代の半ばで、「私くらいの世代で、東京に出てきた者は、昔ながらの茨城弁はもう話せませんね」と言った。「なんちゃって茨城弁ですか」と私が言うと、「はい、そうです」と言って笑った。

「江古田」という地名についても話をした。私は今日「蒲田」から来たが、「蒲田」は「蒲」の生える田んぼ(湿地)ということで意味はわかりやすいが、「江古田」ってどういう意味でしょうと。(この話はここでは割愛)

滞在時間は30分ほどだったが、楽しい時間だった。「また来ます」とは安請け合いできないが、近くに来るときがあったらまた寄らせてもらいます。どうぞ「ぐすたふ珈琲」が軌道に乗りますように。

「シアトロン~密空間演劇市~」の会場「兎亭」。

今日と明日、それぞれ昼の部と夜の部があり、二日間をまたぐ深夜の部がある(私は今日の夜の部:17:00-20:00を観に来た)。 

いくつかの劇団、ユニット、個人が一組15分から45分ほどでさまざまなパフォーマンスを見せる。プログラムから口上を引く。

東京江古田のビルの一室
そのドアを開ければ
そこには無限の可能性と特別な空間が待っている

演じるものと
観るものがいれば
そこに演劇が生まれ
そこが劇場になる

“劇場”の語源である
ギリシャ語の「THEATRON」
そのイメージをもとにして企画された
「シアトロン-密空間演劇市」
場所にとらわれず
創造性に溢れた舞台芸術を
創る歓びと
観る愉しみ
その二つが交わる場所が
舞台になる

 幕開けは「獣の仕業」の主宰立夏と「人体色彩画廊I'NN」代表の中野皓作による2人ユニット「Lorem Ipsum」(ロレン・イプサム)による即興劇。観客からその場でお題(キーワード)を3つもらって、その場で脚本(らしきもの)を書いて、演じる。お題は「肉」「ドライヤー」・・・あと一つが何であったか思い出せない。落語に「三題話」というのがある。寄席の客に適当に3つのお題を言ってもらって、それを織り込んだ噺をするという趣向だ。3つのお題は「人名」「品物」「場所」で、どれか一つを下げ(オチ)に使うという約束がある。この制約は話にストーリー性をもたせるために必要なことである。しかし、「Lorem Ipsum」のお題にはまったく制約がない。それはストーリー性をそれほど重視していないためであろう。実際、演じられた即興劇は、「肉にガラスが入っていた」「ドライヤーが断線していた」「壁に穴が空いている」といった想像力を刺激する台詞(主として立夏が書く)に中野がパフォーマンスで応えるというやりとりで進行した。中野のパフォーマンスは日頃から彼が一人で行っているパフォーマンスを土台にしていて、そこに立夏がからんでいく(「まきこまれていく」という表現の方が近い)。ストーリー性は希薄なので、15分が経過してアラームが鳴った時点で終了である。おそらく15分という時間は緊張感を持続しながらこの種のタイプの即興劇を演じるには適当な時間だろう。また、2人の組み合わせは、言葉と身体の組み合わせといってもよいもので、その二つが共鳴しあえるためには相性の問題が大切だろう。あとから中野に聞いたところでは、立夏の台詞は彼のパフォーマンスを引き出してくれるものであるという。

「ぜん」という舞台俳優が落語の『死神』を高座で披露した(30分)。最初、私は彼が俳優であることを知らず、若手の落語家あるいは落語を趣味とするセミプロなのだろうと思って聞いていた。しかし、聞いているうちに、彼の語り口は落語家のものというよいりも、俳優の一人芝居のそれであることに気がついた。きっと俳優としての修業の一環として落語に取り組んだのではないかと想像する。話の最後、死神との約束をやぶってしまった男が、自分の寿命のロウソクが燃え尽きるのをなんとかしてくれと死神に哀願するが、死神は取り合わず、命尽きていく場面は、まるで新劇の舞台を観ているようであった。

「Lorem Ipsum」(ロレン・イプサム)が再び登場。今度のお題は「人参屋さん」「ペンギン」「だるま」(・・・だったろうと思う)。村上春樹の作品に登場してきそうなキャラたちである。15分の即興劇。ストーリー性たっぷりの落語『死神』の後であるから、その非ストーリー性がいっそう際立つ。そして私たちは気づくのだ。演劇という空間を創り出すためには、ストーリーは絶対に不可欠なものとはいえないということに。

演劇ユニット「DEAR DEER」による演劇「MOON AFTERNOON~5つの小さな物語~」(45分)。前衛性のまったくない、おそらく確信犯的にそれを排除して、思い切り昭和レトロな芝居を見せてくれた。それがかえって倒錯的にポストモダン的であったが、リーダーのドナルド松山が、あとで本人も言っていた通り、今日は台詞を随所で噛んで、客席には「頑張れ」と「やれやれ」という気分が交錯していた。

ここで舞台は地階に移る。観客も靴を脱いで移動。三度、「Lorem Ipsum」(ロレン・イプサム)が登場。今回は即興劇ではなく、最初と二度目の即興劇をドッキングさせた(「DEAR DEER」の上演中に構成を練って)パフォーマンスを披露。三度目となると観客も寛いで観ている。ある意味、非常にテンションの高い休憩時間の余興。お疲れ様です。

ヴォーカリストのリンリのステージ(15分)。オリジナル曲を3曲披露。ストリートミュージシャンかと思いきや、シンセサイザーを駆使した音楽は重層的で、宇宙の広がりを感じさせ、歌姫の降臨を思わせた。

トリを務めたのは、今回の「シアトロン~密空間演劇市~」を企画した、「舞台芸術創造機関SAI」の芝居『無題』(50分)。上田秋成の『雨月物語』的世界を思わせる怪奇譚。麻宮チヒロの脚本は日本語の散文として見事で、俳優たちの台詞回しも堂に入っており、これが劇団としての初の「和モノ」の芝居とはとても見えなかった。実に完成度の高い芝居だった。

「演劇市」の名の通り、さまざまな舞台をみせてもらえて、大いに楽しんだ。

江古田駅の周りは飲み屋ばかりで、昔あったいい蕎麦屋は見つけられず、夕食は蒲田に戻ってから食べることにして電車に乗り込んだ。

蒲田に着いたのは9時半ごろだった。「吉野家」に入る。

ねぎ塩豚丼(アタマ大盛り)+豚汁を注文。今日は一食しか食べていないので、腹ペコである。

ねぎ塩豚丼は初めて注文したが、さっぱりとした塩味が今日のような蒸し暑い日にはいい。豚汁との組み合わせがよいと思う。

3時、就寝。