さて、英国の衣料、となった場合にはとこっとん頑固で、古典的。高価な割にあか抜けない、代わりにスタイルが変わらない、(変えない)おかげで長年着られる、のだから結局リーズナブルである、という認識は、今は昔。はっきりいって、昭和の頃の出来事。
いまや、モード系まで取り入れたトレンドど真ん中をついてくるスタイル抜群のプロダクツが多いという印象。
いつまでもアンダーステイトメントばかりはやってられない、ということでしょうか。トレンドに対してもイタリヤとはまた違うアプローチなのが興味深い。その一方で、しっかりとクラシックラインも温存しておいて、陳腐化しないようにある程度のアップデートも重ねており、収益の2本柱がきっちりある。
Barbourもそんななかにあって、さぞかし伝統依存の古いスタイルなのか、と思いきや、とんでもない。
これでもかとある、過去のアーカイブズに忠実な造形は守っておいて、そこへいろいろと新機軸を盛り込む。
今回取り上げている、このMotor Cycle Shirtにしてからが、見所満載です。
そりゃそうです。あのトリプルワラント取得のBarbourが、コムデギャルソン仕込みのモード系全開のデザイナー、吉田十起人の起用、というだけですでに大事件なのです。
一体どうしちゃったの、というのが当時の日英両国、いえ全世界の反応だったはず。
が、吉田さん=TOKITOは英国文化には造詣が深かった。使われるシーンを徹底的に研究しておいて、それに最適化したディテールを巧妙に造り込み、プロダクツにミゴトに落とし込んでいます。
今風の細身のシェイプが効いた造形にはキホン、Barbourのオイルドコットン製ですが、機能性満点の立体裁断がこれでもかと落とし込まれています。Barbourの他のラインとの最大の違いはこのあたりなのかな?
特にショルダー近辺の裁断が立体的で、凄まじいほかに、脇腹や袖にベンチレーション機能まで持たせてあるあたりが、服好きをくすぐってくださいます。
また、Motor Cycle Jacketではなく、Shirtと名乗るだけあって、スワローテイルの造形を持つ、シャツのディテールをわざわざ盛り込んであるあたりにシャレを感じるわけです。
ううむ、オサレなだけでなく凝ったディテール満載、さらに総体として個性的。とリミテッドエディションに特有のこりまくりの造形ですが、全体にスッキリしたスタイリングの邪魔はけしてせずに、TOKITOならではの、どこか時代と国籍不明のテイストがきっちり盛り込まれているあたりがステキ。
人気ものなわけです、というわけでさらに次号につづく。