普通珈琲豆というのはデイリーなものなので常連さんは皆一定の周期で来店される
のですが、二三日前に来店されたばかりなのに全く同じ量をまた注文する方もいます。
来店者に飲ませたら買った豆を奪われたとか娘が秩父に帰り全部持って帰ってしまったとか
うれしい出来事のように語っていきます。自分が気に入っているものが他人に認められると
いうのもまた自慢のようです。
色々観念に捉われたり、気になったりしてそれが自分の美意識として蓄積していくと
なにかと生活にもいろいろこだわりがあったり人それぞれの思いというのは時にやっかい
なものです。
私はあまり触れたくもないのですが、先月から全くスキーに行けてなくてこれは昨年から続く
葬式ラッシュという事態も関連していてまあ避けられないことはあるものです。
まだチャンスもあり、昨年などはゲレンデでなく白馬の雪渓などを狙って滑りに行くつもり
でいたのにあの最盛期の雪質から春のグサグサ雪を滑っても面白くないだけでなく苦行で
さらにこの時期のメインは主にコブの攻略に取り組むことにもなり、それらを考えると
途端に別にスキーに行くこともないかという気もしてしまうのです。
これは雪が悪くなる二月下旬から三月の間を夢中で滑る期間を経なかったので今更春スキーに
行って苦行だけの雪行きをしようという意識を砕くのです。
そうして今雪の誘惑が遠のくとこれから新豆の季節にどんな豆を仕入れるか今から戦略と
情報方収集にも力が入るのでした。当然連休前にいろいろの取引をやめる業者が多く、
そうなればこの時期だけこの値段で出すからというお得情報も入っています。
最近は自家焙煎店の釜の小型化が進み、大きな卸業者でもマイクロロットという少量仕入れ豆を
抱えています。
これが実に個性的で、焙煎店の個性をアピールしやすい魅力にあふれています。ただし、こういうのは
手間もかかるし、味の見極めも生の豆でサンプルはもらえないことが多く、焼いた豆を試飲する程度に
なるのですが、まあそれでもどこがどんな面白いものを持っているかというのは見当が付きます。
買う価値のあるものかとか突き詰めていくと味で飛びぬけて個性的で値段も手ごろというのはないのです。
みんな自分の店はこんな豆という他所にない豆を焼いてアピールできる反面それほどスペシャルでもない
というものが殆どで中には明らかにスペシャルティグレードか怪しいものもあり、QグレードやRF認証など
全くないものもあります。これらをわざわざ付けている業者はおおむね良心的で、新進の喫茶店などは
こういうマイクロロットを買い占め自身が商社に命じて特別に農家から買い入れたかのような振りで
売っていることもあります。
というわけで今まではあまりこういうのは買わなかったわけなのですが、たまたま手にした説明文が
妙に心を打つものがあり発注してしまいました。
日本ではよくあるリゾートの再生で海外から資本が入り、新たなリゾート地になったところにそこで
飲む珈琲を作りたいという事で農園を買い取り採算度外視で作られた豆というのです。これは売らなくても
いいつもりで味わいたいから買うという事で発注してしまいました。
あと最近はなかなか手に入りづらくなったカルモデミナス地方の豆です。これは厄介で世界中で人気で
なかなか買えなくなった豆で買えても高いのです。日本ではまだこのカルモデミナスを名指しで愛好する
人は少なく、イエローブルボンが今では大きな商社で出ていてブルボンなら他の地域で味のいいのがあるので
珍しくもないと思っている方もいます。
最近は100年樹とかレッドブルボンとかさらに色々なブルボン種があり、複雑化していますが、ブラジルの
ブルボンならもっと安いのがあると一緒くたに考えている人が殆どです。しかし、この日本だけが手摘み完熟
日陰干しなどという手間のかかるものばかり欲しがると世界標準とは違うこだわりを示しているのかもしれません。
さらにマイクロロットではその独特の作られ方にドラマが加わると一層味に反映しているというイメージは
かぶせやすくこれからも増えていくものと思われます。
これから色々と試して入れていきますが、どれだけこちらの想像に応える物なのかわくわくとしています。
お楽しみに。