金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

262:野中柊 『ひな菊とペパーミント』

2006-12-07 12:31:15 | 06 本の感想
野中柊『ひな菊とペパーミント』(講談社)
★★★☆☆

離婚してしまったパパとママ、パパの再婚に、再婚相手の息子、
友だちとのトラブルに恋の噂。
13歳の女の子・結花の中学生ライフを描く物語。

帯に「ちょっとキュートな少女の世界」とあったけれど、
まさにキュート。
長野まゆみ『コドモノクニ』が好きな人は
たぶんこれも好きだと思えるはず。
女の子どうしの、あからさまでないけれどぎくしゃくした空気は
ちょっとだけリアルだなと思ったけど、
全体的にふわふわした綿菓子みたいな雰囲気。
松岡くんとの最後のやり取りがとっても可愛い。
すべてが「開きっぱなし」で終わってしまったので、
ちょっと個人的には物足りないのだけれど、
きちんと締めていないところもこの雰囲気に一役買っていたのかな。
野中さんの本は「女の子」が主人公の話が好きだ。
大人が主人公の話は「むき出し」な感じが苦手。

しかしこの結花ちゃんは、客観的に見てみると
典型的な「男が途切れないタイプ」だな。
末恐ろしい!

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261:酒見賢一 『陋巷に在り〈1〉』

2006-12-06 12:53:16 | 06 本の感想
酒見賢一『陋巷に在り〈1〉儒の巻』(新潮社)
★★★☆☆

後宮小説』の著者が、12年かけて連載していたという
古代中国を舞台にしたサイキック・アクション。
孔子と、「一を聞いて十を知る」と評された最愛の弟子・顔回が、
政敵たちと「儒」の能力をもって戦う。

「話がおもしろすぎて打ち切りにできなかった」という話が
文学賞メッタ斬り!』にありました。
政治的野心を持った孔子、敵の首を刎ねちゃう孔子、
聖人君子じゃない孔子像がおもしろい。
今はまだ孔子周辺の政治的なトラブルと素性の話に終始していて、
当時の呪術的集団や儀式、孔子の生涯にまつわる説明が
頻繁に出てくるため、ややうんざりしてしまうのだけれど、
話の前提なのでがんばって読む。
子路や子貢という名前を知っている人物が出てくると
なにやらうれしい。
どうやらヒロインとなるらしい、願回に恋して
子どもながら押しかけ女房しているも大変可愛い。
おっとりしている願回のキャラクターは、わたしの好みに吉と出るか
凶と出るか、まだ判断がつかないところ。
まだ様子見、ということで1巻は★3つ。

「論語」も、思想的な面はさておいて、きちんと読めば
実在の人物の言行録としてはかなり面白そう。
中学・高校の教科書で一部読んだだけだけれど、
孔子の弟子たちに対する人物評や弟子とのやり取りには
当時から興味大でした。

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260:江國香織 『冷静と情熱のあいだ―Rosso』

2006-12-01 14:02:08 | 06 本の感想
江國香織『冷静と情熱のあいだ―Rosso』(角川文庫)
★★★★☆

未読の文庫本がなくなってしまったので再読。
江國香織が女性視点、辻仁成が男性視点で描いたラブストーリー。
映画化もされましたね。
映画版の竹野内豊は鼻血が出そうにすてきだったのだけれど、
辻仁成(※)の描く順正が好きじゃないのもあって、
物語としては特別感銘を受けることはなかった。
映画だとダイジェスト的にまとめられ、映像の力もあって
単純に「すてき……」と思ったのだけど。
(竹野内豊をすてきだと思っただけかもしれない

そんなこんなでストーリーはさておき、
文章として見たときに、『ウエハースの椅子』についで
この本の表現は好き。
言葉が喚起する色彩とかイメージを含めて、すごいセンス。
無駄なディテールについて指摘されるけれども、
表現としては無駄がなく、行間を読ませる種類の文章だと思う。

(※)
一時期は、彼の文章や映像からにじみ出る、
「俺ってかっこいいぜ! 才能あるぜ! 女にモテるぜ!」
という感じをおもしろく見ていたこともあったが、
美穂ちゃん(なぜか我が家では昔からちゃん付け)と
まんまと結婚しおおせてからは、腹立たしくて仕方ない。

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259:吉田修一 『最後の息子』

2006-11-29 12:12:29 | 06 本の感想
吉田修一 『最後の息子』(文藝春秋)
★★★★☆

デビュー作である表題作に、「破片」「Water」の三篇を収録。

「最後の息子」が良かった~!
何もせずヒモのような生活を送っている「ぼく」が、
撮影したビデオを見返しながら、友人の死と
同棲しているオカマの閻魔ちゃんとの関係に思いを馳せる。
ビデオを見ている理由とタイトルの意味が最後にわかるのだけど、
閻魔ちゃんのメモにほろっときた。
先に続編である『春、バーニーズで』を読んでしまったので、
ちょっと感傷的な気分になってしまう。

「破片」は長崎を舞台に、母親を失った男ばかりの家族で、
酒屋を継いだ三男と東京から帰省した次男を中心に描いた物語。
なんだろうかこのもの悲しさ……方言のせい?
「Water」は完全にエンターテイメント。
最後の大会をひかえた水泳部の高校生の物語。
青春!
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258:首藤瓜於 『事故係生稲昇太の多感』

2006-11-29 11:46:41 | 06 本の感想
首藤瓜於 『事故係 生稲昇太の多感』(講談社)
★★★☆☆

『だらしな日記』で取り上げられていたもの。
江戸川乱歩賞でデビューした著者の受賞後第一作。
父の志を継いで警官になり、交通課に配属された22歳の昇太。
クールでかっこいい先輩・見目とともに、
事故にまつわる小さな謎を解いていく連作短編集。

反発しつつも先輩大好き!、いじけてめそめそしたり思い込みでつっぱしる
主人公が大変かわいい。
童顔の可愛い男の子かと思いきやゴリラ顔ってところがまたいい。
しかしこれ、一冊で終わりなの??
見目との関係が話の中心になっていたのに最後に見目出てこないし……。
マドンナと見目がつきあってるっていう話も、結局確証がないまま。
話自体はおもしろかったのだけど、仁藤や津山のキャラクターも
生かしきれていないようで残念。
続編ないのかなあ。
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257:アンソロジー 『蜜の眠り』

2006-11-28 13:25:48 | 06 本の感想
アンソロジー『蜜の眠り』(廣済堂文庫)
★★☆☆☆

籐子ちゃんライブラリーから拝借。
女性の性愛をテーマにしたアンソロジー。
執筆メンバーは明智抄、榎本ナリコ、恩田陸、柴田よしき、
島村洋子、中村うさぎ、姫野カオルコ、松本侑子、
水樹和佳子、横森理香。
恩田陸「睡蓮」と柴田よしき「化粧」は既読。
両方とも初出はこの本だったみたい。

アンソロジーは力量の差があからさまに出てしまうものだけど、
これはひどいなあ……。
聞いたことのない名前が三つ、と思ったら漫画家さんでした。
明智さんは比較的うまかったけれど、あとは……うーん……。
漫画という形で出したほうがよかったんじゃないかな……。
中村うさぎさんの「幽霊」は文体のテンションに抵抗を感じてしまった上、
オチが早々に読めてしまって残念。

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256:乙川優三郎 『冬の標』

2006-11-27 18:52:54 | 06 本の感想
乙川優三郎『冬の標』(中央公論新社)
★★★★☆

幕末の小藩で絵の世界に見入られ、画家の岡村葦秋に
師事することになった十三歳の少女・明世。
成長するにしたがって世間のしきたりと衝突し、
画家として生きたいという意志に反して嫁ぐことに。
婚家や女の立場にしばられ、数々の不運に見舞われながらも、
やがて同門の平吉や修理と再会して再び絵への思いを強め、
自分の道を歩みだすことになる。

ともすると「耐える女の一代記」になってしまいそうな展開なのだけれど、
明世の絵に向ける激しい情熱が前面に押し出されていて、
悩みつつも自分の道を進もうとする彼女の強い意志に
さわやかさを感じる。
前半ですでに何度かじーんと来てしまうエピソードが
さしはさまれていて、親子の情、師弟愛、同門の仲間たちとの絆や
姑との和解などなど、読んでいる間中、胸がいっぱい。
絵への情熱と重なったような恋もせつない。
このところよく名前を見かける機会の多かったこの著者、
要チェックだわー。

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255:吉田修一 『ひなた』

2006-11-27 18:27:53 | 06 本の感想
吉田修一『ひなた』(光文社)
★★★☆☆

ブランドHの広報に新卒採用されたレイと、その恋人である大学生の尚純、
尚純の兄で信用金庫に勤める・浩一と、その妻で編集者の桂子。
四人の男女それぞれの視点で描かれる日常。

JJで連載されていたというのにふさわしく、
女の子ウケしそうなエッセンスをちりばめているのだけど、
『パレード』と同様、女の子の一人称パートでも
「男の人ががんばって書きました」という感じが
ほとんどしないのはさすがといったところ。
レイや桂子の心理も理解できるところが多かった。
口に出来ない秘密や嘘をかかえながら、維持されていく
夫婦や恋人、兄弟や友人の関係。
ちょっとズーンときてしまう秘密を含みながら、
さらりと読ませる文章のトーンで一気に読了。
一つの物語としてきちんとオチがついていない感じを受けたので
★3つだけれど、おもしろく読めました。

著者が「イケメン作家ランキング1位」という先入観のせいか、
主役の男の子はかっこいいイメージしか思い浮かばない
そして「寅さんマニア」という、あいかわらずなんだかわからないけど
笑ってしまうエピソードに吹き出してしまった。

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254:辻村深月 『ぼくのメジャースプーン』

2006-11-22 11:44:59 | 06 本の感想
辻村深月『ぼくのメジャースプーン』(講談社ノベルス)
★★★☆☆

籐子ちゃんから借りっぱなしになっていたもの。
ようやく読了。

理不尽な暴力によって深く傷つけられ、心を閉ざした
同級生のふみちゃんのため、不思議な「力」を使って
犯人と対決しようとする小学4年生の「ぼく」。
同じ「力」を持つ親類の秋山先生のもとへ通い、
力の使い方と「罰」について考えることになる。

いいお話なのだけど、いまいち入り込めなかった……。
先生との間に続く観念的な問答に、途中で投げ出しそうになる。
しかし期待値が高かったためちょっとがっくりしてしまっただけで、
十分おもしろい話だと思う。
教育学部出身だという著者の視点も興味深い。

手元にないのでうろ覚えの記憶なのだけど、
秋山先生は『子どもたちは夜と遊ぶ』の秋山先生ですね。
『子どもたち~』で真相が明かされなかったエピソードの
解決編にもなっていてにやり。
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253:北村薫 『ニッポン硬貨の謎』

2006-11-20 17:35:54 | 06 本の感想
北村薫『ニッポン硬貨の謎』(東京創元社)
★★★☆☆

エラリー・クイーン好きによるエラリー・クイーン好きのための物語、
といった感のあるミステリー。
エラリー・クイーンの遺稿を著者が翻訳したという形で、
来日したクイーンの関わる連続幼児殺害事件が描かれる。

わたしはエラリー・クイーンを読んだことがないため、
著作に関する謎解きの部分はまったくわけがわからず、
読み飛ばしてしまった。
『六の宮の姫君』は芥川・菊池作品を読んでいなくても
楽しめたのだけど……。
ミステリーもあまり読まないので「お約束」が身についておらず、
抽象的・観念的な犯罪のディテールに、
「どんな必要性が……?」
と思ってしまうのだけれども、
パズルのピースがぴたぴたとはまっていく展開には快感を感じる。
基本的に北村さんの本は悪く受け取れない、という
超個人的前提で★3つ。

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